家賃のクレジットカード払い、オーナー様にメリットはあるか

 コロナ禍が長期化したことが追い風になり、世の中全体がキャッシュレス化に向かっています。家賃の支払い方法も、キャッシュレス化を望む声が増えている感があります。

 賃貸アパートや賃貸マンションの住人の中から、家賃をクレジットカードで支払えないかという問い合わせが届いているオーナー様が数多くいらっしゃると思います。

 なお、クレジットカードによる家賃の出納は、管理会社がクレジットカード会社と提携していないと行えません。管理会社によりクレジットカードの取り扱いをしていないところがあります。

 家賃の支払い方法をクレジットカードにした場合、オーナー様にとってプラスになる点とマイナスになる点がありますので整理します。

 なお、メリットとデメリットとを比較する以前に考えなければならない問題があります。これについては後述します。

プラスになる点

●賃借人が家賃の支払いを忘れることがなくなる

 オーナー様および管理会社において悩ましいのは、賃借人が家賃の支払いを忘れた際に督促しなければならないことです。クレジットカード払いにすれば確実に家賃が入金しますので、督促を行う必要がありません。

●入居先を家賃の支払いにクレジットカードを利用できる物件に限定する賃借人の入居を促せる

 家賃をクレジットカードで支払える物件に限定して入居先を探す方がいらっしゃいます。

マイナスになる点

●クレジットカードの取り扱い手数料が発生する

 手数料はカード会社や賃貸条件により様々であり3~7%程度です。多くの場合、5%前後とされています。通常、この手数料はオーナー様が支払うことになります。このため、家賃収入は銀行振り込みや口座振り替えの場合よりもかなり減ります。

 なお、クレジットカードを利用する賃借人から徴収する家賃を、銀行振り込みや口座振り替えにより徴収する方の家賃より高く設定することはクレジットカード会社が定める規約に反します。

●入金の時期が遅れる

 家賃の出納手続きを管理会社が行う場合、通常は月末か月末近くにクレジットカード会社から賃借人に家賃を請求します。その後、管理会社経由でオーナー様の預金口座に家賃が振り込まれますが、入金の時期は3週間~1ヶ月後になります。

●賃料を相場より高めに設定しないと取り扱い手数料を回収できない

 相場より高額なお部屋は入居者が決まりにくいです。設備を充実させる等の方策を執る必要があり、利回りの低下につながることがよくあります。

都心および周辺では利回りが低すぎるので、クレジットカードの利用は不適

 ご承知の通り、都心および川崎・横浜等における収益物件の利回りは低調です。表面利回り数パーセント程度しかない物件でクレジットカード手数料を家賃の5%前後も徴収されるのではたちまち赤字です。何のために賃貸住宅の運営を行っているのかわからなくなります。

 収益用不動産における現状の利回りでは、家賃の支払い方法をクレジットカードにしてオーナー様が手数料を支払う余裕はないと言えます。

 利回りが高い収益用不動産でないと、オーナー様はメリットを享受できないと言えます。