消費税率アップが収益用不動産オーナーに及ぼす影響

 10月10日朝より全銀ネット(全国銀行資金決済ネットワーク)で障害が発生し、三菱UFJ銀行、りそな銀行、ゆうちょ銀行等の11の金融機関において、他行宛の振込が出来なくなりました。

 その後、ゆうちょ銀行は復旧したようですが他の銀行は10日の午後でも他行宛の振込が出来ず、他行からの入金も停止しました。

 管理契約において、月末迄に賃借人から振り込まれた家賃を翌月10日に振り込むことが規定されている物件が数多くあります。10日の家賃入金がないことで「銀行が破綻したのではないか」と不安になられたオーナー様がいらっしゃるかもしれません。どうやら、原因は連休中にコンピューターの入れ替えを行ったことにあるようです。

 本題です。各種報道によると岸田内閣は大増税を計画しているようです。消費税の大幅増税も検討されているといわれています。

 ロシアがウクライナを侵略し、中国が台湾を攻める恐れがあるために防衛費を倍増させる必要があるとされています。現在はGDP(国民総生産)の1%を上限としていますが、これを2%迄上げるために増税が必要と言われています。

 軽減税率が適用されない場合、税率は10%です。消費税率を19%以上に上げるべきと主張する財界人がいますが、筆者は不動産業に携わる者としては狂気の沙汰であると考えます。

 税率が13~15%以上になった場合、賃貸住宅の経営が破綻するオーナー様の激増が想定されます。賃貸住宅が不動産競売や任意売却により売却された場合、多くの賃借人が退去を求められることが想定されます。社会不安が増大し、収拾が付かなくなる恐れがあります。

 ご存じの方が多いと思いますが、消費税の仕組みについて説明します。原則として売上げに付随して徴収した消費税額から仕入れの際に支払った消費税を差し引いた金額を納税します(簡易課税制度を選択した場合を除きます)。

 ところが、1棟マンションまたはアパートのような住宅で構成される収益用不動産の場合、賃料は非課税とされています。これは政策的な配慮によるものです。

 建物の購入費、清掃費、管理会社への管理委託料、大規模修繕費、室内設備の更新費等には消費税が発生します。これは仕入れの際に発生する消費税ですが、家賃に付随して徴収される消費税額はゼロ円です。このため、消費税は全額オーナー様が負担しています。

 消費税率が引き上げられた場合、オーナー様が支払う消費税額が増えます。後述しますが、この分は家賃から回収できません。

 「消費税率が改定されたら家賃を値上げすれば良い」と考える方がいらっしゃいます。しかし、家賃の金額は賃貸借契約において定められており、契約の更新時でなければ家賃の値上げは非常に困難です。

 契約更新時に家賃の値上げを賃借人に求めても、賃借人が値上げを拒否することがよくあります。家賃の値上げを承服できない賃借人が契約更新前の家賃相当額を法務局に毎月供託することがあります。また、家賃の値上げを求めると賃借人が退去することがあります。賃借人が退去したら次の入居者を募集しなければならず、リフォーム費や仲介手数料等が発生します。

 つまり、消費税率がアップした場合は消費税の増税分を全てオーナー様が支払うことになります。家賃への転嫁は非常に困難であり、転嫁できないことが多いと考えるべきです。

 現在、収益用不動産の利回りが極限まで低下しています。コロナ禍になる前に購入した物件でない限り、消費税の増税は、賃貸住宅の運営が破綻する原因になりかねません。

 収益用不動産をこれから購入する方は「実質」利回りに注意し、これがあまりにも低い物件の購入は避けるべきと考えます。また、利回りが極端に低い物件の購入は、目安として購入資金の半額以上を自己資金で賄えなければ見送るべきでしょう。

 既に収益用不動産を購入して運用しているオーナー様におかれては収支を細かくチェックし、無駄な支出を抑えることが重要です。メンテナンス、入居者退去時のリフォーム等において不要な費目がないかを細かく確認することをお勧めします。

 新たな入居者を募集する際に、賃貸仲介を行う不動産会社が仲介手数料の上乗せ、広告費、販売手数料等を要求することがあります。このあたりも要注意です。エリアにより事情は異なりますが、請求金額が妥当かを細かく検証することをお勧めします。