賃貸物件の内見に、オーナーが自ら対応することは慎むべき(オーナー様向け)

賃貸物件の内見を行う際に、オーナーが内見を行う部屋の中で待ち構えていることがあります。オーナーの中には「入居する人については私が直接面接して決めたい。」と強硬に主張される方がいます。オーナーに嫌われたくないことから、不動産会社の中にはこのようなオーナーの意向に応じるところがあります。

私の持論ですが、賃貸物件の内見が行われる際に、オーナーは立ち会うべきではありません。その理由は以下の通りです。

1.内見時におけるオーナーの立ち会いは、入居希望者のチェックを妨げる
不動産会社は、日頃より多くのお客様に接しています。お客様のご希望に近いと思われる物件を紹介する際に、不動産会社の担当者は、それとなくお客様の性格や入居後にトラブルを起こす恐れがないかをチェックしています。

入居審査の際に確認するのは勤め先、仕事内容、収入、家族構成だけではありません。粗暴な振る舞いをする恐れがある方の入居はお断りするしかありません。

地域を限定した上で家賃相場を無視した安い家賃の賃貸物件(相場の3分の2以下)の紹介を依頼されたことがありますが、該当する物件はありません。希望される地域には該当する物件が存在しないことを丁寧に告げたのですが「俺は客だ。お客様は神様だ。俺が求める家賃の物件を紹介するのがお前の仕事だろ。」等と大声でわめきちらしたあげく、最後には「この地域では商売を一切できなくしてやる。」と言われたことがあります。

また、希望される条件に基づく物件検索を開始してから2~3分も経過していないのに「資料を早く出せ」と怒鳴り始め、持参してきた週刊誌を丸めて机や椅子をガンガン叩き、その後は意味不明の奇声を発した方がいます。

このような方の入居を認めるとオーナーと深刻なトラブルになることが自明なので、粗暴な行為をされる方には物件の紹介をお断りし、お帰りいただいています。

また、会社の事務所内では借りてきた猫のように大人しいのに、内見を行うと豹変する方がたまにいます。お客様と内見担当者との二人だけになると、大声で怒鳴り散らしたり暴言を吐く方がいます。

「方角が悪い」「汚い」「狭い」「眺望が良くない」等、物件の欠点を片っ端から指摘して内見の担当者を怒鳴り上げるだけならマシな方で、「こんなに薄汚れた汚い部屋を貸したいとは、ここのオーナーは守銭奴か、リフォーム代も出せない金欠だな。」とか「今時、こんなに古い物件を持っているオーナーは大バカだな。立て直すだけの金も無い貧乏人なのか。」等の暴言を吐く方がいます。

このような方でもオーナーが目の前にいると借りてきた猫のように大人しく振る舞い、本性を出さないことがあります。明らかに入居不適格者であるにもかかわらず、内見の際にオーナーが立ち会ったことから正確な判断ができず、入居を認めてしまい、後でオーナーと深刻なトラブルになることがあります。

2.オーナーが内見時に立ち会うと、入居審査が甘くなる
オーナーの中にはお客様を目の前にした際に「この方を入居させれば家賃が入る。家賃が欲しい。」と考え、突飛な行動をされる方がいます。

内見をしているお客様が「入居します。よろしくお願いします。」等とオーナーに告げることがあります。その際に、オーナーが反射的に「わかりました。入居してください。」等と返答してしまうと大変に厄介です。

賃貸借契約は口頭でも成立します。入居申込書の受領後に勤務先および収入書類等の確認、家賃保証会社による審査等を行う必要がありますが、オーナーが「入居してください。」と告げると、勤務先や収入等に関する調査結果や家賃保証会社の審査結果に関わらず賃貸借契約が成立する事態になります。

会話の内容をスマートホン等で録音されると極めて厄介です。入居申込書が提出された後に収入が少ないことが判明した場合、または過去の家賃滞納歴により家賃保証会社による保証を受けられない場合でも、オーナーは賃貸借契約の成立を認めなければならなくなります。

それでもなお入居希望者に「賃貸借契約を締結できない」と伝えると、入居希望者が都道府県の不動産課等に相談することがあります。このようなことが起きると、オーナーはかなり苦しい立場に立たされます。

3.内見の際に、家賃等について、オーナーと直接交渉を始める方がいる
オーナーを目の前にすると、その場で家賃を値切る交渉を始める、フリーレントの要求等をされる方がいます。

中には、「この場で家賃の値下げに応じてもらえれば入居しますが、この場で回答してもらえないなら他の物件にします。」等、オーナーの心理を見透かした言い方をする方がいます。

オーナーがお断りすると、稀に激昂して大声で騒ぐ、悪口をまくし立てる等をされる方がいます。中にはオーナーの心身を傷つけてしまうレベルの物言いをされる方がいます。

この場合も前項と同じで、スマートホン等で会話の内容を録音されると後が厄介です。口頭であっても、入居希望者による家賃値下げの要求等に応じると、撤回は困難です。

家賃などの賃貸条件に関する交渉は不動産会社に任せるべきであり、オーナーが直接交渉することは避けるべきです。