居住中の売買物件では、売主は内見の際に価格交渉に応じないのが得策

売買物件では、現況が居住中でも内見が実施される
賃貸中の物件は、店舗や事務所等の事業用物件である場合を除き、賃貸中の状態で内見が実施されることはありません。しかし、居宅として利用している戸建住宅や区分マンションが売り出される際は、「居住中」であっても内見が実施されることが多いです。

特に、住み替えを理由とした買い替えの場合は、居住中の状態で内見が実施されることがあります。

空室の状態で内見を実施できれば買主が早く現れることが多いのですが、空室にするためにはどこかの賃貸物件を借り、一旦引越をしなければなりません。しかし、売却を理由とした賃貸物件の一時貸しは、オーナーが断ることが大半です。賃貸物件のオーナーは、長期間借りる方が入居することを希望しているからです。

必然的にウィークリーマンションまたはマンスリーマンションを借りることになりますが、家賃は通常の賃貸物件よりも高額です。また、3LDKや4LDK等の広い住宅の場合は家財の量が多いので、引っ越し代が多くかかります。

以上の理由により、売買物件の場合は現況が「居住中」でも内見が実施されます。

現況居住中の物件では、売主が立ち会うことが多い
現況居住中の物件に対する内見を実施する場合は売主の都合に合わせ、売主が在宅している際に行うのが通常です。つまり、売主が立ち会うことが原則です。

売主が立ち会う理由は、室内に売主の私物があるからです。内見の際に売主の私物が紛失することを防ぐため、立ち会いをお願いしています。

内見の際に売主との価格交渉を始める方がいる
購入希望者の中には「自分が売主と直接価格交渉をすれば、大幅な値引きを引き出せる。」と勘違いしている方がいます。

オーナーが立ち会っていると、「あと500万円安くしてくれれば買います。500万円を値下げしていただけるか、今すぐに回答してください。この場ですぐに回答してくれなければ買いません。」等と言い、値引き交渉を始めようとする方がいます。

売主の中には「今すぐにお金が必要なので仕方なく売却する」という方がいます。最近はコロナ禍であることから、経営している会社の破綻を避ける為、または失業して住宅ローンを返済できなくなった為に売却する方がいます。このような方に対して大幅な値引きを申し入れ、すぐの返答を求めることは酷です。

また、抵当権等の担保権が設定されている不動産では、金融機関に対する返済を考慮した値付けが行われている物件がありますし、値下げには金融機関の承認が必要な物件があります。これらの物件では、内見の際に価格交渉を行うことは無理です。

内見の際に購入希望者が値引き交渉を始めようとした場合、売主は「値引きの話は、不動産会社を通してください。」と告げ、何も言わないことをお勧めします。すぐの回答を求める相手とは交渉しないのが得策です。何を言われても、価格交渉のテーブルに着く必要はありません。

「今すぐの回答」を求める方とは、交渉を打ち切るのが得策
契約日には重要事項説明書や契約書が出来上っていることから、契約の直前に値引きを求めれば売主は承諾すると思っている購入希望者がいます。呆れる話ですが、契約当日に関係者全員が集合している場で、大幅な値引きを求めてきた購入希望者がいます。

不動産会社における担当者は、ここで契約が出来ないと自分の営業成績に影響するので、契約中止には慎重になりがちです。

しかし、購入希望者が「この場で値引きに応じなければ契約しない」等と強硬に主張する場合は、売主は毅然として契約をお断りするのが得策です。「すぐにお金が欲しい」という思いに囚われ、相手のペースに乗せられて値引きに応じると何百万円、または何千万円も損することがあるので、相手のペースに巻き込まれないようにすることが肝要です。

経験上、「今すぐの回答」を求める方とは交渉を打ち切るのが得策です。