困った相談(その9、心霊スポットや事故物件を紹介して欲しい)

 毎年、夏になると必ず心霊スポット、事故物件、朽廃した建物等を紹介して欲しいとの相談があります。心霊ドッキリ番組や事故物件の特集番組等を制作したいとして、主にテレビ局やその下請けの番組制作会社から問い合わせがあります。

 事故物件のオーナー様のほとんどは、落ち度が全くないのに自身が所有する収益用不動産で死亡事故が発生し、資産価値の減少に苦しんでいます。

 法律上は死亡事故が発生した部屋のみが事故物件として扱われます。しかし、死亡事故が発生すると多くの場合に同じ建物に入居している他の入居者が退去します。

 それに事故物件になるとアパート名およびマンション名がネット上に広く公開されることから死亡事故が発生した部屋だけではなく、同じ建物の全ての部屋において家賃を大幅に値下げしないと次の入居者は決まりません。 

 自身が所有する収益用不動産を「事故物件」としてテレビ番組内で紹介して欲しいと思うオーナー様はいません。テレビ局やその下請けの事業者に「事故物件」を紹介することは、オーナー様を更に苦しめることになるので大半の不動産会社では紹介を断ると思われます。

 「心霊スポットとして取り上げたいので事故物件を紹介して欲しい」との依頼もありますが、一体何を考えているのでしょうか。放送されたら興味本位で多くのYoutuberが訪問し、動画を公開します。

 事故物件を所有するオーナー様の心情を逆なでする、このような依頼をするテレビ局、およびその下請けの番組制作会社は一体何様のつもりなのでしょうか。自分本位であり、思い上がりも甚だしいです。

 「朽廃した建物を紹介して欲しい」という相談もあります。その理由は「ドラマや映画の撮影に利用したい」、「心霊ドッキリ番組の制作に利用したい」というものです。

 しかし、朽廃している建物は突然崩壊することがあり、とても危険です。少しの振動や衝撃でも大きく崩れることがあり、朽廃した建物内における撮影は死傷事故に直結します。安全に撮影できるとは限らず、事故が発生しても誰も責任を負えません。

 朽廃した建物を所有するオーナー様の多くは建物を取り壊して建て替えるか、更地にして売却することを希望しています。しかし、費用を捻出できないことから放置していることが多いです。事故物件のオーナー様と同様に、こちらもほとんどのオーナー様は「そっとしておいて欲しい」と考えています。

 「夏だから心霊ドッキリ番組や事故物件の特集番組を制作して視聴率を稼ぎたい」という発想は、「心霊現象はフェイクであり幽霊は実在しない」という発想に基づいているのでしょう。

 しかし、社歴が長い不動産会社では現代科学では解明できない不思議な現象に遭遇しているところが多くあります。先日の投稿において、私の会社が実際に遭遇した事案を投稿しました。他にも不思議な出来事に遭遇したことがありますが、守秘義務があるのでこのブログへの投稿は控えます。もちろん、不思議な事が発生しても、それだけでいわゆる心霊現象といわれるものの存在を科学的に証明することは困難です。

 私の会社では心霊スポット、事故物件、朽廃した建物等の紹介は全てお断りしています。