今後、収益用不動産の価格はどうなるか

 いわゆるインフルエンサーと呼ばれる著名人、ジャーナリスト、著名YouTuber、その他の方が「今後は不動産価格が暴落する」とか「不動産価格が下がるので今は買わない方が良い」などと発信しています。

 これらの主張や記事における根拠の多くは「今後は不況になり、不動産を買い求める方が少なくなるので値下げする」、「物価高を止めるために政府・日銀が金利を上げ、さらに為替介入をするので円高になり、資材価格が下がるので不動産価格も下がる」というものです。

 しかし、先日投稿した内容の通り、金利を2%程度上げると何万もの企業が倒産し、大量の失業者が発生します。さらに100万件を超える住宅ローンの焦げ付きが発生し、破産者が急増する恐れがあります。それに国債の償還にも支障をきたします。「失業者および破産者の急増、国債の償還不能を避けたい」として、政府および日銀は金利を上げたくても簡単には上げられないと考えられます。

 為替介入ですが、既に複数回実施しているにもかかわらず1ドル145~148円のあたりをウロウロしている状況です。介入直後は一時的に円高になるものの、1週間もしないうちに元に戻る状況です。それに大規模介入を繰り返すとアメリカから「為替操作国」と認定され、高額な関税を課される、経済制裁を受けるなどの不利益を被る恐れがあります。今後も継続して為替介入を行うことは困難です。

新築の収益用1棟アパート、1棟マンションの建設が抑制

 新型コロナウイルス感染症が蔓延したことから飲食店や物販店の経営者が事業から撤退し、収益用不動産の運営を始めました。収益用不動産の建設ラッシュが始まり、東京都23区内では売り出し中の土地が激減しました。さらにコロナ禍及びロシア-ウクライナ間の戦争により、資材価格が急騰しました。

 このような事情により新築物件の販売価格が急騰し、現在、東京都23区内における新築の1棟アパート、1棟マンションの表面利回りは3%台の物件が大半です。これでは事業用ローンを利用して購入し、運営することは困難です。 

 これまでは高収入のサラリーマンが長期の事業用ローンを利用して新築の収益用不動産を購入していましたが、このようなことは出来なくなりつつあります。現在、購入できるのは収益用不動産の運営を主な生業とする不動産賃貸業の方、および資産圧縮を目的として購入する資産家の方のみです。

 上記の状況から、金融機関の多くは収益用不動産を新築しようとする不動産会社、および建設会社に対する融資に慎重になり始めています。今後、都心では新築の収益用不動産における売り出し件数は少なくなると思われます。

中古の収益用不動産も売り出される物件数が激減

 中古の1棟ものの収益用マンションやアパートが売主の言い値で売れる状況になり、猛烈に値上がりしました。東京都23区内における中古物件の表面利回りは、数年前は8~10%超が主流でした。ところが現在は5.5%未満の物件ばかりになっています。つまり、買い替えた途端に利回りが極端に低くなります。これでは買い替えの意欲が全く湧きません。

 現在、中古の収益用不動産を売却したいと考えている方の大半は、物件の買い替えではなく現金化を最終目標にしています。このような方はとても少ないことから中古の収益用不動産、特に1棟アパートや1棟マンションの売却案件はとても少なくなっています。

外資の動向と結論

 外国の投資機関およびファンドは、「円安により日本のインフラ、企業および不動産が大幅に安くなり、買いやすくなった」と捉えています。ハウステンボスや西武・そごうも外資が購入するようですが、今後は都心の収益用不動産を外資が購入していくことになりそうです。日本人が購入できないのを横目で見ながら外資が購入することが想定できます。

 それに前述したように新築、中古を問わず、売り出される物件数が激減しています。これでは売主が強気になり、値下げにはなかなか応じないのではないかと考えられます。

 あくまでも筆者の個人的な見解ですが、東京都23区内における1棟アパートおよび1棟マンションの価格は当分の間、大きく変動することはないと考えます。 

 ただし、朝鮮半島情勢および台湾情勢の変化等により日本に何らかの影響が生じた場合、またはアメリカ国内における社会情勢が大きく変化した場合は価格の変動が想定されます。この場合、どのように価格が推移するかは全くわかりません。

※収益用不動産の購入および運営は自己責任でお願いします。このブログの記載内容に従って行動したことにより損失が発生した場合でも、筆者および筆者が所属する有限会社大森不動産は一切の責任を負いません。