収益用不動産、レントロールに記載のない内容に要注意

 1棟アパート、1棟マンション等の収益用不動産を売買する際は、売主または売主側の不動産会社においてレントロールを作成します。レントロールとは各部屋毎の賃借人のプロフィールを一覧にしたものです。 

 レントロールには部屋番号、借主の氏名(個人・法人の別のみ記載の場合あり)、用途(居宅、店舗、事務所の別)、契約期間、賃料および共益費、預り敷金(または保証金)の金額、貸室の間取り(1R、2DK等)、専有面積等が記載されています。空室がある場合はその旨と想定賃料が記載されています。

 収益用不動産を購入するかの判断においてレントロールは極めて重要な資料です。満室で稼働しているかについても一応は確認できます。しかし、家賃の滞納を繰り返す方、行方不明の方、退去予定の方はレントロールに反映されていないことがよくあるので要注意です。

 レントロールを提示された場合でも家賃の滞納者、および行方不明者がいないかを必ず確認する必要があります。退去予定の方がいる場合は家賃の納付状況、退去予定日、および預り敷金を確認します。

 また、新型コロナウイルス感染症が蔓延したことから売主(貸主)が臨時に家賃の減額を認めている場合があります。この場合、減額後の賃料がレントロールに反映されていないことがよくあります。家賃を減額している貸室がある場合は減額後の賃料、および減額の期間を確認する必要があります。

 入居者が貸主との間に締結している賃貸借契約書は売主が保管しています。「購入する物件として有力な候補である」という確信が持てた場合は、売主から全ての賃貸借契約書、連帯保証人引き受け承諾書(連帯保証人がいる場合)、保証契約が締結されていることを示す証拠書類(家賃保証会社と借主とが保証契約を締結している場合)のコピーを取り寄せ、確認することをお勧めします。

レントロールの閲覧だけでは足りない

 収益用不動産を購入する際は、売主と入居者との間に締結している全ての賃貸借契約を承継することになるので、これらの書類の閲覧(コピーの提出)を求め、レントロールが正しいかを確認します。万が一、閲覧を拒む場合はその物件を購入しないことをお勧めします。

 閲覧を拒む場合、第三者に無断転貸をしている、家賃を長期間滞納している等の理由により賃貸借契約の合意更新を行っていない入居者がいることがあります。このような物件を購入すると、明け渡しを求める民事裁判を直ちに提起しなければならないことが多く、煩わしいだけではなく多額の出費になるので購入を避けるのが賢明です。

「サクラ」に要注意

 また、入居者がいわゆる「サクラ」である場合も閲覧を拒否されがちです。「サクラ」は満室で稼働をしていること、および地域の家賃相場よりも遥かに高額な家賃で入居している賃借人がいることを装うために利用されます。「サクラ」は不動産管理会社の社員等であることが多いです。

 「地域の相場より家賃を高く設定していますが、これでも満室で稼働していますので大丈夫です。」と言われたら、「サクラ」の存在を一応は疑うことをお勧めします。

 売買契約が成立すると、「サクラ」は1~数か月後に退去します。空室になると、家賃相場に合わせた賃料を設定しないと次の入居者が現れません。 

 この場合は家賃を下げざるを得ませんが、事業用ローンを返済できないばかりか固定資産税などを支払うこともできない状況に陥り、抵当権または根抵当権が実行され、購入した収益用不動産を任意売却または不動産競売により安く売却されることになります。

 ほとんどの場合に多額の借金が残ります。金額が返済できない程に多額な場合は金融機関から破産を申し立てられることになります。入居者がいわゆる「サクラ」である可能性を少しでも感じた場合は、その物件の購入は避けることをお勧めします。