不動産競売が中止される場合

 不動産を購入する際、地方裁判所が開催する不動産競売を利用して購入すると安く購入できることが多いです。収益用不動産の運営を行っているオーナー様の中には不動産競売を積極的に利用されている方がいらっしゃいます。オーナー様が狙う物件の多くは都心の古い戸建住宅および賃貸用区分マンションです。

 裁判所が発行する公告を参照し、入札をして競売の開催日になったところ、突然「取り下げ」として競売が中止されることがあります。この他にも、裁判所が競売の中止を決定することがあります。

 どのような場合に不動産競売が中止されるかについて解説します。

●任意売却が行われ、当該物件が購入された場合

 不動産が競売にかけられた場合、最終的な売却価格は市場流通価格よりもかなり安くなるのが通常です。このため、競売にかけられている場合でも「任意売却物件」として不動産仲介業者が販売することがあります。価格は市場流通価格の約8割に相当する価格が値付けされていることが多いです。

 任意売却物件では、住宅ローンの利用が認められないのが通常であり、契約不適合責任が免責される物件がほとんどです。また、債権者が「競売にかけた方が高値で売却出来る」と判断した場合は売却を断ることがあります。

 それでも「現金一括で購入する」という購入希望者が現れ、金融機関等の債権者が売却を承認した場合に任意売却が成立します。

 この場合、債権者は「競売手続の取り下げ」を裁判所に申し出ます。これにより競売手続は中止されます。

●何らかの犯罪に関わる物件であることが判明した場合

 重大な犯罪(殺人、傷害致死、監禁致死、その他)の現場であることが判明した場合、手続の開始後でも中止になります。警察が捜査を行い、証拠を収集する必要があるからです。

 このような場合は裁判所が競売手続を中止します。 

●全ての入札者が入札の要件を満たさない場合、または入札者が誰もいない場合

 入札書類に記載された入札者に関する情報に誤りがある場合、入札者とは認められません。虚偽の事実を記載した入札書が提出された場合も同様です。

 これらの場合や入札者が誰もいない場合、競売手続は一旦中止になります。通常は売却基準価額を下げた上で後日に再び競売が行われます。それでも入札者がいなかった場合は再び売却基準価格を下げて競売を行います。価額を下げて行われる競売の回数は地方裁判所により異なり、通常は1~3回です。

 その後は特別売却に移行します。裁判所において売却期間を定め、購入の申し込みを早く行った者に所有権が移転します。

●競売の対象となる建物が火災等により失われた場合

 競売の対象が失われた場合は、当然中止になります。