賃貸物件に入居中の方が勤め先を解雇された場合(賃借人向け)

2022年8月9日

各種報道によりご承知の通り、1月14日より大阪府、京都府、兵庫県、愛知県、岐阜県、福岡県、栃木県にも緊急事態宣言が発出されました。

東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都4県には既に発出されています。テレビ朝日の報道によると、緊急事態宣言が発せられた後における飲食店利用者数は6割以上も減少したとのことです。

最も恐れていたことが現実になりつつあると言えます。過去には円高不況、リーマンショック、東日本大震災の際に景況感が大きく悪化しましたが、今回はそれどころではありません。

飲食店に限らず、今後は廃業や倒産が増えるのは避けらません。残念ながら失業する、または賃金カットをされる方が激増すると思われます。大企業に勤めている正社員も安心できない状況になりつつあります。

今日は、賃貸アパートやマンションに居住されている方が勤め先から解雇された場合に、どのように対応するべきかについて書きます。

1.「ホームレス」にならないようにする
現状のコロナ禍では、一旦「ホームレス」になってしまうと、再就職は極めて困難です。住居を追い出されて「住所不定」になると、求職活動を満足に行えません。

2.賃貸物件のオーナーから一方的に賃貸借契約の解約を申し入れられても断る
意外に知らない方が多いので書きますが、勤務先を解雇されただけでは賃貸借契約は終了しません。借地借家法は、賃貸人が賃貸借契約を解約できるのは「賃貸人および賃借人相互の信頼関係が破壊されたとき」であると定めています。具体的には賃料の滞納が続いた場合が該当します。

オーナーの中には入居者が解雇されたことをもって、オーナー側から賃貸借契約を直ちに解約できると誤解している方がいらっしゃいます。オーナーによる退去要求は、法律上不当な要求です。

管理会社の中にも、オーナーのご機嫌を取りたいことから、「解雇されたことから直ちに退去してもらいます。」等と言う会社があります。これも不当な要求です。

不当な要求なので、賃借人は断って構いません。ただし、賃料は忘れずに支払う必要があります。家賃を滞納すると、オーナーから賃貸借契約を解約される恐れがありますので注意する必要があります。

なお、賃貸借契約の中に「勤め先を解雇された場合には、賃貸人は賃貸借契約を終了させることができる。」等の一文がある場合でも、これは公序良俗に反する内容(民法第90条)であることから、この一文は無効です。

3.賃料値下げの交渉
オーナーが了承するかはわかりません。しかし、失業中は賃料を下げてもらい、再就職できた後にまとめて支払う等の交渉をする余地があります。

ただし、恒久的な賃料値下げには応じないオーナーが大半であると思います。また、賃下げに応じてくれるとしても15~20%程度でしょう。「半額にして欲しい」などの申し出は却下されると思われます。

4.雇用保険の給付を受ける
勤務先が雇用保険に加入していたことが要件です。法令により、従業員を雇用する全ての法人は、雇用保険への加入が義務づけられています。
詳細は、こちらのサイト(ハローワーク)を参照願います。

5.住居確保給付金の活用
主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内である場合、もしくは個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合に、一定の要件を満たすことを条件として、原則3か月間(延長は2回まで最大9か月間)家賃相当額が支給されます。

東京都区内の場合、居住者数が1人の場合は53,700円 2人の場合は64,000円、3人以上5人以下の場合は69,800円が支給額の上限です。住居確保給付金の詳細は、こちらのサイト(厚生労働省)を参照願います。

2022年8月9日補足

 住宅確保給付金の申請期間(再支給)は、2022年8月末迄延長する措置が執られています。9月以降も延長されるか否かについては、2022年8月9日の時点では公表されていません。

6.生活保護の申請
最後の手段と言えるかもしれません。リスクとしては、親族や親戚に「生活の面倒を見られないか」とのお尋ねの連絡が届くことが挙げられます。預貯金、手持ちの現金がほとんどないことが要件になります。