共同住宅の階段崩落事故、施工会社が自己破産を申請

2022年8月8日

先日の投稿で、東京都八王子市にある共同住宅の階段崩落死亡事故について書きましたが、施工会社が自己破産を申請したとのことです。以下、令和3年5月14日に東京新聞が配信した記事から引用します。

※掲載社の都合により元記事が削除され、リンクが切れることがあります。
※令和4年8月8日追記:リンク先の元記事が削除されたのでリンクを外しました。

東京・八王子のアパート階段崩落死事故 神奈川の施工会社、則武地所が破産

 帝国データバンク横浜支店によると、東京都八王子市で4月、外階段が崩れて住人の女性が転落死したアパートを施工した「則武地所」(相模原市中央区)が13日、横浜地裁相模原支部に自己破産を申請した。負債額は約4億400万円。業績悪化に加え、事故を巡り警視庁に業務上過失致死容疑で家宅捜索を受け、事業継続を断念したとみられる。  

  同社は2000年7月に創業。相模原市や周辺地域で、主にワンルーム用の3階建て共同住宅や一戸建て住宅の建築を手掛けていた。ピーク時の17年4月期の売上高は約20億5100万円を計上していた。

 しかし、元請け工事の減少や不動産事業の低迷で、20年4月期の売上高は約9億7800万円に減少し、資金繰りが悪化していた。

東京新聞

安く仕上げなければ価格競争に勝てないいうことで、安普請な建物を建築したのでしょう。安い材料を使用しても、安全に居住できる建物であれば問題ありません。

しかし、安い材料を利用するだけではなく、素人目に見ても手抜き工事が行われたと思える建物や、危険と感じる建物を建てるようになると、「○○建設が建てた建物は手抜き工事だらけなので仲介しない方が良い」等の評判が、不動産会社にも自然に伝わります。

私の会社にもこのような情報が伝わることがあります。この場合は、その業者が建築した建物はお客様に紹介できない案件として紹介しないことになります。

建築した物件が売れなくなることから、資金繰りが悪化した建設会社は、より安普請な建物を建築するようになります。さらに資金繰りが悪化すると、居住者が安全に居住できないことを知りながら、欠陥がある建物を確信犯的に建てるようになります。

この事故が発生したアパートでは、耐力が必要であり、かつ風雨に直接さらされる部分に木材を使用していたようです。結果として居住者を死亡させてしまいました。損害賠償を請求されても支払えないことから自己破産を申請したものと思われます。

施工会社が倒産した場合、賠償責任はオーナーが負担することになる
遺族は慰謝料および損害賠償を求めることになりますが、施工会社の自己破産が認められた場合、オーナーが賠償を請求されることになります。

何故オーナーが損害賠償を請求されるかですが、賃貸借契約においてオーナーが履行しなければならない義務の一つである「安全に居住させる義務」の履行を怠ったことから事故が発生したと見做されるからです。

さらに、このような事故が発生した場合、事故の被害者が居住していた部屋は「事故物件」となります。

他の部屋の取り扱いですが、この建物の住人は、事故が発生した階段を毎日利用する方が多いと思われます。被害者が居住していた部屋とは異なる他の部屋の住人が退去したことから新たな入居者を募集する際には、賃貸募集をする部屋は事故物件ではないものの、共用の階段で死亡事故が発生した事実を告知する必要があると思われます。結果として、建物全体が事故物件と同様の扱いを受ける可能性があり、家賃を大幅に下げないと空室が埋まらない状況になります。

施設賠償責任保険(施設所有者賠償責任保険、施設管理者賠償責任保険)に加入していれば、保険金から賠償を受けられます。しかし、賠償金の全額、および事故物件になったことによる損害の両方をカバーすることは難しいと思います。

賃貸住宅経営にはリスクがあります。施設賠償責任保険(施設所有者賠償責任保険、施設管理者賠償責任保険)への加入は必須です。保険に加入していないと事故が発生した際にオーナーが慰謝料および損害賠償を支払わなければならなくなり、オーナーが破産することがあります。

1棟もののアパートやマンションを購入するオーナー様におかれては、物件を紹介された際には利回りだけに注目するのでは無く、危険箇所が無いかについて十分確認することをお勧めします。

建築士を同伴して物件を確認し、意見を述べてもらうことも有効です。