旧耐震基準と新耐震基準

東北地方で大地震がありました。各種報道によると、東日本大震災の余震と思われるとのことです。このような大きな地震が起きると、特に中古建物の購入や賃借を検討中のお客様から、検討中の建物が旧耐震基準、新耐震基準のいずれであるかとか、これらの違いは何かについて尋ねられることが増えます。

旧耐震基準と新耐震基準
旧耐震基準とは、震度5程度の地震では倒壊しない建物を建築するための建築基準でした。建物が震度6または7の地震で倒壊する恐れがある建物でも震度5で倒壊しなければ建築が許可されていました。

これに対し、新耐震基準は震度5程度の地震では軽微な損傷を受ける程度であり、震度6または7の地震でも倒壊を免れるとする建築基準です。

震度6または7の大地震が発生した場合、新耐震基準で建築された建物は「倒壊を免れる」のであり、建物全体が傾く、建物全体や躯体にクラックが入るなどの損傷を避けられることはありません。

東日本大震災の際は、新耐震基準の建物でも建物が傾き、大きなクラックが入ったことから全壊(居住不適)と認定された建物が数多くあります。全壊と認定された場合の多くは修理不能であり、建て替えるしかありません。

新耐震基準の建物であれば絶対に安全であるとは言えません。新耐震基準で建築された建物であれば、大きな地震が発生した際に逃げる時間を旧耐震基準で建てられた建物よりも稼ぐことができる、または生存空間を保てる可能性が高い程度に考えるのがよいと思います。

いつから建築された建物が新耐震基準に該当するか
これは宅地建物取引士資格試験(宅建試験)における試験問題として出題されてもおかしくありません。

他のWEBサイトや不動産に関する解説本の多くは「昭和56年(1981年)6月1日以降に建築確認申請された建物が新耐震基準である。」と記載しています。

建築確認申請は着工日以前に行います。このため、昭和56年(1981年)6月1日以降に着工した建物が新耐震基準の建物であることになります。

ご承知の通り、建物の建築には長期間を要することがあります。1棟マンションやビルは1~2年の建築期間を要します。従って、建物の竣工日が昭和57年(1982年)、または58年(1983年)の前半である建物の中には、旧耐震基準で建築されている建物があります。建物の着工日は不動産登記簿には掲載されていないので、購入を検討している場合は仲介を行う不動産会社に問い合わせることをお勧めします。

宅建試験の問題の中に「昭和57年(1982年)に竣工し、完成検査が実施されて検査済証が発行された建物は、全て新耐震基準で建築されている。」という内容の正誤を問う問題があった際には、「誤り」とするのが正解です。

旧耐震基準で建築された建物を購入するメリットとデメリット
メリットは、価格が安いことがあげられます。建築後、概ね40年程度を経過していることから、極めて低廉な価格で取引されることが多いです。投資用の1棟マンションやソシアルビルである場合、利回りがかなり良好な物件が多いです。

デメリットは、住宅ローン、事業用ローンのいずれも審査が厳しくなりがちであることです。大地震が頻発している感があるため、金融機関としては担保価値を低く見積もりがちです。このため、販売価格の半額~7割程度しか融資してくれないことがよくあります。多額の自己資金を用意しないと購入できない物件が多いです。

また、旧耐震基準で建築された建物は、建築されてから約40年を経過しているため、RC造またはSRC造の建物の場合でも老朽化による建て替えを検討しなければならない時期が近づいています。物件自体を安く購入できても、取り壊して立て替える際には多額の費用が発生します。