不動産を購入する際に買主が受領し、保管するべき書類について
不動産を購入する際の流れについては、多くのWEBサイトや解説本に掲載されています。
売買契約を締結する際には不動産会社から重要事項説明を受け、重要事項説明書および売買契約書に署名捺印を行い、買主が売主に手付金を渡します。その後、決済日に買主が売主に残代金を支払い、司法書士が売主から登記必要書類を預かり、所有権移転登記をおこなうために法務局に赴きます。購入した不動産が区分マンションや中古戸建住宅である場合は、決済日に鍵の受け渡しが行われます。
買主が売主より受け取るのは鍵や設備の説明書(住宅の場合)だけではありません。以下の書類等は捨てずに保管することを強くお勧めします。
1.不動産の種類に関わらず受領し、必ず保管するべき書類
・登記識別情報
所有権移転登記が完了した際に、法務局が新しい登記名義人に交付します。オンライン化される前は「登記済権利証」が発行されていましたが、これに置き換わるものです。不動産の所有権を第三者に移転する、または担保権を設定する等の場合に、この登記識別情報が必要になります。
・重要事項説明書および売買契約書
税務申告の際には、売買契約書が必要です。自宅用の不動産購入では住所地の移転が伴います。住民票の記載事項を変更することになりますが、売買契約書は住所地が移転したことを証明する書類になります。このため、市区町村役場の窓口から提示を求められることがあります。また、不動産を購入すると税務署からお尋ねとして書類が届き、説明を求められる、または税務調査が行われることがあります。その際に、重要事項説明書および売買契約書が必要になります。
・領収書(手付金および残代金)
所有権移転登記が完了するまでの間、購入した不動産の所有権が自分にあることを証明する重要な書類です。税務署からお尋ねがある際の説明、または税務調査において提示する必要があります。
2.土地(戸建住宅などの場合を含む)を購入する際に受領し、必ず保管するべき書類
・土地測量図
土地を売買する際には、売主が土地家屋調査士に依頼して測量を実施するのが一般的です。その際に、土地測量図が作成されます。通常は、この土地測量図は法務局に提出され、実測図として保管されます。
・境界確認書
境界確認書は、土地の所有者が隣地との境界の位置を確認した証拠として、測量の際に作成します。境界の位置が異なると土地面積(実測面積)が変わるため、売買の際における評価額が変わります。明確にしておかないと、購入後に隣地所有者とのトラブルに発展する恐れがあります。
・覚え書き書
土地の測量をしたところ、土地上の建物が隣地に越境していることが確認されることがあります。このような場合は、将来において建物を建て替える際に越境部分をなくすことについて約束することを記載した覚え書き書を作成して売買を行うことがあります。作成する際は、この覚え書き書の記載内容が土地の新たな買主(特定承継人)にも適用される旨を記載します。
この覚え書き書がないと、この土地を購入した方が越境している隣地建物を直ちに撤去するように求める裁判を提起する等、トラブルに発展することがあります。売主が覚え書き書を作成しているのであればこれを必ず受領し、保管しておく必要があります。
3.戸建住宅、または建物1棟を購入する際に受領し、必ず保管するべき書類
・建築確認済証、審査図面、検査済証
廃棄してしまう、または紛失される方が大変に多いです。捨ててはいけない書類です。
建築確認済証は、建築を計画している建物が建築基準法や条例等に違反していないかを建築工事前に審査図面により確認した結果、違反がないと判断された際に発行されます。検査済証は、建築完了後に現地で完成検査を行い、予め申請されたとおりに建築されていることが確認された際に発行されます。
これらの書類は、提出された市区町村役場、都道府県庁、または都道府県庁が定める役所において一定期間保管されますが、その後は保管する役所の判断に委ねられています。保管期間はまちまちです。提出後、数年が経過した時点で破棄するところがありますが、電子化して長期間保存しているところもあります。
重要な書類である理由は、建築確認および検査を済ませていることを証明する唯一の書類と言えることにあります。建築確認検査済であることを証明したいということで後日に役所に問い合わせても、破棄したために証明できないと回答されることがあります。
これらの書類を廃棄または紛失してしまうと、建築確認検査が行われているかを客観的に証明する書類がないので、建築確認済であるかについては不明の建築物として扱われます。すると、後日に売却する際の査定が低くなることがあります。
建物を購入した際には建築確認済証、審査図面、検査済証を必ず受領し、保管することが極めて重要です。
・建築設計図書、工事記録書
後日にリノベーションや改築を行う際に、大いに参考になります。柱の位置や太さ、重心の位置などがわかります。法務局、市区町村役場などに提出されることはないので、不動産の買主が売主から受け取り、保管する必要があります。
4.区分マンションを購入する際に受領し、保管するべき書類
・分譲時のパンフレット
パンフレットがあると、売却時の査定を上げることが可能になります。捨てずに保管されることを強くお勧めします。
・マンションの管理規約、管理細則、長期修繕計画書
管理規約および管理細則にはペット飼育の可否(どの動物を何頭まで飼育できるか等)、楽器演奏の可否、駐車場の有無と利用方法、管理組合理事の選出方法等が記載されています。長期修繕計画書には、例えば外壁塗装やエレベーター更新等を何年後に行うか等の計画が記載されています。
・重要事項調査報告書
マンションの管理組合、または管理を委託されている管理会社が発行します。該当する部屋における管理費及び修繕積立金の納付状況(未納になっている金額)、管理組合で積み立てている管理費および修繕積立金などの情報が記載されています。
通常は売買仲介を行う不動産会社が取り寄せ、未納の管理費および修繕積立金がある場合は物件販売代金から差し引きます。未納の管理費および修繕積立金は、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)に基づき、管理組合または管理会社は買主に請求します。請求される金額に誤りが無いかを確認するためには、この書類が必要です。
・台帳記載事項証明
建築確認済証および検査済証は1棟の建物についてのみ発行されます。区分所有建物については都道府県または市区町村が定める役所において、この書類が発行されることをもって、建築確認申請済または検査済であることを確認できます。この書類は再発行を受けられるので、必ずしも長期間保管する必要は無いかもしれません。
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