不動産売買の後、関係書類を安易に破棄してはいけない

例えばマイホームを購入した際に、不動産会社や売主から様々な書類を渡されます。これらの書類の中で、いわゆる登記証といえる登記識別情報通知書、および売買契約書はほとんどの方が保管しています。

しかし、その他の書類は何故か安易に廃棄されがちです。安易に廃棄すると思わぬ損害を招く書類がありますので注意が必要です。

安易に廃棄してはいけない書類
1.売買契約書、登記識別情報通知(廃棄する方はあまりいませんが...)
売買契約書は、売買の対象である不動産および契約の相手方を特定し、売買の条件を記載した重要書類です。税務調査が行われる際には、税務署は必ず売買契約書の提示を求めます。

登記識別情報通知は、従来の「権利書」または「権利証」の代わりになるものです。不動産の売却だけではなく、抵当権や根抵当権などの担保権を設定する際にも必要です。

2.重要事項説明書、告知書、物件状況確認書
売買契約後、何年か経つとこれらの書類を捨ててしまう方がいます。

物件の譲渡を行う際に、売主が責任を負う範囲、当事者間における特約や免責事項がある場合はその内容、告知事項がある場合はその内容、土地の場合はその形状、対象不動産に適用される法令や条例の内容、手付金および違約金に関する内容、契約が解除または取り消された場合の取り扱い等を記載しています。

売買契約の成立後、何年か後に買主からクレームがあったとします。そのクレームが重要事項説明書の特約に記載されている内容である場合は、この特約に従って解決することになります。

また、クレームの内容が告知書に記載されていれば、売買に際し、売主は買主に告知していたことになり、売主は免責されることが多いです。

売買契約書を参照しただけでは、トラブルが発生した際に解決方法を見いだせないことが多いです。

3.領収書
売主は、手付金の領収書、および販売代金から手付金の金額を控除した残額に関する領収書を保管しておく必要があります。将来、税務調査が行われる際には、領収書の提示を必ず求められます。

4.建築確認申請、および完成検査に関する書類(戸建住宅の場合)
この書類は、保管されていないことがとても多い書類です。不動産を購入してから数年が経過すると「もはや不要な書類であろう」とお考えになり、捨ててしまう方が大変に多いです。

「建築確認申請をした場合、役所はその記録を半永久的に保管している」と思われる方が大半であると思いますが、保管期間は役所の裁量に任されており、早いところでは数年も経たないうちに破棄します。

建築確認申請の関係書類を保管していないと、この不動産の売却や担保権を設定する際に問題になることがあります。

役所から「書類が存在しないので、建築確認申請されたかは不明」と回答された場合に、「建築確認申請をしていない建築物の可能性がある、いわゆる無届建築物の可能性を否定できない」と扱われ、査定価格が低くなる、または融資の条件が厳しくなることがあります。

5.隣地所有者等との覚書(土地、戸建住宅の場合)
塀や建物の一部、水道や下水道配管の一部が隣地に越境している等の場合は、建物を再建築する際に問題を解消する旨を記載した覚書が締結されていることがあります。このような覚書は、売買などにより不動産の所有者が変更した際も、新たな所有者に適用されることが大半です。

隣地所有者の構築物などが自分の土地に越境していることから覚書が作成されたにもかかわらず、この覚書を廃棄する、または紛失すると思わぬ不利益を被ることがあります。

6.測量図
土地、建物のいずれも土地家屋調査士が測量した際には測量図を作成します。この測量図も安易に廃棄するべきではありません。

面積を求める際の計算方法、境界標の位置、測量した土地家屋調査士の事務所および担当者氏名等が記載されています。

また、前面道路が私道であり、持分を定めずに私道上に目に見えない境界を設定している場合は、その境界の位置が記載されていることがあります。これらの情報は、法務局に提出される測量図に記載されていないことがあります。

境界線の位置について隣地所有者との間に争いが生じた際に、法務局に提出されていない測量図が紛争の解決に役立つ証拠書類になることがあります。

測量に関する書類は枚数が多いことから安易に廃棄しがちですが、全て保管することをお勧めします。