収益用不動産として中古区分マンションを購入することの是非

 ご承知の通り、収益用不動産には様々な種類があります。1棟マンション、1棟アパート、賃貸用戸建住宅、事業用ビル、貸駐車場、貸地(底地権)、収益用中古区分マンション等があります。

 この中で最も安価に購入できるのは収益用中古区分マンションです。東京都23区内でも1,000万円以下で購入できる物件が数多くあります。川崎市または横浜市も含めると更に数多くの物件が売り出されています。

 ところが、雑誌記事、ブログ、不動産に関する書籍、YouTube動画の中には「収益用区分マンションは購入していけない。」とするものが数多くあります。

 よく書かれている主張、およびその主張に対する筆者の見解を併せて以下に書きます。

1.一部屋のみを購入して運用した場合、空室または家賃滞納が発生すると家賃を全く得られない。そのような状態でも管理費および修繕積立金は毎月支払う必要があり、マイナスになる。

  「空室または滞納が発生すると家賃を得られない」という問題は1棟マンション・アパートや賃貸戸建住宅の場合でも同じです。対策は、複数の物件を購入して運用することです。

2.管理規約および管理細則による制約が大きく、自分が思うような物件の運用が出来ない。例えば「ペット飼育可」にしたくても管理規約または管理細則においてペットの飼育が禁止されていれば、「ペット飼育可」のマンションとして貸し出せない。

 区分マンションにおける管理規約および管理細則の内容は購入前に行われる重要事項説明において説明されるはずです。建物全体は他人との共有です。このことを承知して購入する以上、管理規約および管理細則により区分所有者の行為がある程度制約されることはやむを得ません。

 「『ペット飼育可』にしたくても変えられない」という問題ですが、「ペット飼育不可」の1棟マンション・アパートを「ペット飼育可」にすることはとても困難です。 

 ペットアレルギーを持っている方、およびペット臭が気になる方は「ペット飼育不可」であるから入居していることがあります。これらの方は「ペット飼育可」にした途端に一斉に退去することがあります。空室になるだけではなく、移転に要する費用(引っ越し代、移転先の物件に入居するために必要な仲介手数料および礼金)および迷惑料(通常は家賃の6か月相当額)の負担を求められます。 

3.大規模修繕の内容、発注先、工事費、工事時期についても自分が希望する通りにならないことが多い。特に賃貸物件における春の繁忙期(1~3月)に大規模修繕工事が行われると、入居者募集に大きな支障をきたす。

 建物自体は他人との共有です。建物全体の管理を他人に任せている以上、ある程度は受忍しなければならないと思われます。必要に応じ、工期をずらしてもらうことを管理組合にお願いすることは可能と思われます。

4.高額な管理費、修繕積立金を毎月徴収される。

 管理費は共有部の清掃費用、オートロック・エレベーターの電気料および点検費用、共有部の照明に係る電気料等に充てられますが、これは1棟マンション・アパートにおいても発生します。また、1棟マンション・アパートを運用する場合も大規模修繕を定期的に行う必要があるので、修繕費用を毎月積み立てておく必要があります。

 確かに管理費及び修繕積立金がやや高額であるマンションが存在しますが、管理業務、工事業者の選定、金額の決定は「他人任せ」なので、ある程度は仕方ないと言えます。

5.管理組合の理事選出について輪番制を採用している物件では理事の就任を定期的に求められる。理事に就任すると資金管理、理事会および総会の開催や資料作成等に追われる上、 管理費・修繕積立金を滞納する部屋の所有者に対する督促方法の検討等に多大な労力を要する。

 1棟マンションや1棟アパートのオーナー様は、物件の運用に関する全ての責任を負います。問題が発生し、誰かに相談したくても、建物全体の管理を委託している管理会社がなければ誰にも相談できません。 

 滞納家賃の督促、設備の故障対応、各種クレームへの対応、損害保険の内容検討、消防点検および修繕工事の立ち会い、大規模修繕の内容検討および業者の選定等もオーナー様が自ら対応しなければならないことが多いです。管理会社に管理を委託している場合でも、最終的な判断はオーナー様に委ねられるので、区分マンションの理事よりも精神的および時間的な負担は大きいかもしれません。

6.物件を購入する際の融資が付きにくい

 区分マンションの場合、土地の持分が少ないので融資の金額が低いという問題があります。

 しかし、東京都23区内にある物件でも1,000万円以下で購入できるものが多くあります。融資を受けて購入するより、貯金をある程度貯めてから購入する方がリスクが少なくなります。

結論(筆者の意見)

 1棟マンション・1棟アパートを運用する場合は、オーナー様に多大な労力が求められます。 多くの場合に副業として行うことは困難です。

 これとは対照的に、収益用区分マンションの運営は副業として行えるので気軽に始められます。ただし、空室リスクおよび滞納リスクを避けるために複数の物件を購入することをお勧めします。資金が足りないために複数の物件を購入できない場合は資金を貯めてから購入するか、郊外の物件を探すことをお勧めします。

 雑誌記事、ブログ、不動産に関する書籍、YouTube動画の中に見られる「収益用区分マンションを購入していけない」 という見解は一面的であり、適格性を欠いていると思います。

 収益用不動産の運用を本業にするか、副業にするかで考えるべきであり

 本業で行う場合:1棟マンション、1棟アパート、賃貸用戸建住宅
 副業で行う場合:区分マンション

 ということでよろしいかと思います。

 なお、「1棟マンション・1棟アパートでもサブリース物件であれば、運営を副業として行える」とする見解がありますが、サブリース物件を購入したことが原因で破産に追い込まれた事案が数多くあります。賃貸経営のベテランでなければサブリース物件の購入はお勧めできない状況です。