機械式駐車場付きの1棟マンション、事業用ビルの購入は要注意

 収益用不動産の中には駐車場付きの物件があります。平置き式の駐車場であれば問題ないのですが、東京都内や地方都市の中心近くでは機械式の駐車場が設置されていることがあります。

 駐車場を機械式にすることにより、敷地が狭い場合でも数多くの車両を駐車させることが可能です。このため都心では約40年前から駐車場の機械化が大きく進みました。当時は「1棟マンションを駐車場付きにすれば賃借人の客付けが容易になる」、「数多くの営業用車両を事業用ビルに駐車させたい」という考えから、狭い敷地に多くの車両を駐車させることが可能な機械式駐車場を併設する1棟マンションおよび事業用ビルが急激に増加しました。

 ところが、多くは車高1.5m以下かつ車幅1.7m未満の5ナンバー車、いわゆるセダン型の乗用車を駐車させることしか想定していませんでした。それにオペレーターを雇用する必要があることから現在ではあまり建築されないタワー式で構築されたものが多くあります。 

 特に西暦2000年頃より前に建設された機械式駐車場の多くにおいて、最近流行している車高1.8~2m程度、車幅1.8m前後のSUVやファミリー向けワゴン、ハイルーフ車などが駐車できないという問題が生じています。

 1棟マンションの賃借人募集に際し「駐車場付き」として募集しても、入居希望者が所有する車両がSUVやハイルーフ車である場合には入居を断念することになります。

 古い機械式駐車場の場合は、故障しても部品の調達が困難になりつつあります。また、最近の流行に合わせ、ハイルーフ車等を駐車可能にする更新工事を行いたくても1億円を超える費用を要することがよくあります。 

 また、自治体の条例により一定の規模を超える建物の場合には「附置義務台数」が決められていることがあり、個々の建物において定められている台数以上の車両が駐車できる駐車場を確保することが義務付けられています。ハイルーフ車を駐車できるように設備を更新すると駐車可能台数は必ず減少します。すると「附置義務台数」に満たないことになり、結局は駐車場設備を更新できないことがあります。

 取り壊して更地にする場合でも、タワー式の駐車場では数千万円以上の撤去費用を要することがあります。発生する費用が問題になり、更新・解体のいずれも容易に行うことができなくなっています。

 更に困るのは、問題がある機械式駐車場でも固定資産税および都市計画税が毎年発生し、納税しなければならないことです。駐車可能な車両がセダン型の乗用車のみである場合、マンションの入居者専用にする、時間貸駐車場として利用する、のいずれでも満車で稼働させることは無理であり、利用せずに放置するだけでも赤字になります。

 また、機械式駐車場が併設されている場合はタワー式でなくても経年劣化が進行していることがあります。死傷事故がしばしば発生していますので、点検記録の確認は必須です。

 中古の1棟マンション、事業用ビルを購入する際に機械式駐車場が併設されている場合は、その駐車場の仕様に注意する必要があります。更新も解体も困難な機械式駐車場が存在するために安値で売られている物件があるからです。

 売り出し価格が安く、表面利回りが良好で立地が良いと思われる物件でも、購入した途端に機械式駐車場の存在が問題になり、対処不能なまま手をこまねいていたところ大赤字になり、運営が破綻することがあります。

 旧式の機械式駐車場が併設されている物件の購入を検討する際は、駐車場設備の更新または解体に要する費用がどのくらいなのかを見定め、それを加味した上で採算が合うかを十分に検討することを強くお勧めします。