利回りが低い収益用不動産には手を出さないのが賢明

 現在、販売されている収益用不動産(1棟マンション・アパートなどの投資物件)の利回りが極端に低い物件が増えています。都心では、表面利回りで4%程度の物件はザラにあります。

 賃貸住宅を運営する場合、家賃の全額が収入になるわけではありません。室内設備が故障、老朽化した際は修繕または更新をしなければなりません。エレベーター、オートロック、屋上、外壁については定期的に点検する必要があります。その他にも排水管の洗浄や消防点検を定期的に行う必要があり、費用が恒常的に発生します。

 点検の結果、不具合が見つかった場合には直ちに修理等の対応をする必要があります。また、エレベーターやオートロック、外壁については将来を見据え、更新を行う費用を積み立てておく必要があります。

 その他にも固定資産税、都市計画税がかかります。入居者が退去して空室が発生すると、次の入居者が決まるまで家賃収入を得ることができません。

 表面利回り4%の物件では実質的に2%前後の利回りしか得られないことが多いです。それなのに利回り4%程度の物件が増えています。

 新型コロナウイルス感染症が流行する前は、都心でも表面利回り8%以上の物件が多く存在しました。しかし、最近は収益用不動産の運営を始める方が急増したことから売主様が強気になり、表面利回り4~5%程度の物件が巷にあふれる状況です。

 実質的に2%前後の利回りしか得られない物件では、事業用ローンを利用できません。事業用ローンの利率は3%前後に設定されていることが多く、必ず「逆ざや」になるのでローンが成立しません。都心に立地する表面利回り4~5%程度の物件は、全額を自己資金で賄える方でなければ購入をお勧めできません。

 それに実質利回りが低いと、物件に何らかの異変が発生した場合に対処できないことがあります。

 しかし、「都心の物件であれば空室期間が短くて済みます。」とか「賃貸借契約更新の際に家賃を値上げすれば良いです。」、「早い者勝ちなので、すぐに買わないと他の方が購入してしまいます。」などの甘言を用い、利回りが極端に低い都心の物件を購入するようにしつこく迫る質の良くない営業担当が増えています。

 事業用ローンを利用して利回りが低い物件を購入すると返済不能に陥る恐れがあります。また、オーナー側から家賃の値上げを一方的に通告することは、誰でも納得できる程度の正当な理由がなければ困難です。

 利回りが低い物件を購入すると、最悪の場合は自己破産に追い込まれますので要注意です。

 表面利回りについては最低でも6%、できれば8%以上の物件を探すことをお勧めします。なぜか東京都内の山手線内とか城南エリア(目黒区、品川区、世田谷区、大田区)にこだわる方が多いのですが、このエリアにある物件の利回りは総じて低いです。事業用ローンを用いてうっかり購入した場合、良くても収支はトントンであり、得られる利益はとても少なくてガッカリすることが多いです。酷い場合は最初から赤字になることがあります。

 利回りが比較的良好な物件は、川崎、横浜、千葉の物件に多いです。都区内にこだわるのであれば城東および城北エリアには利回りが良好な物件があります。都心の山手線内にある物件でなくても、駅近の物件であれば空室期間が長期化することは避けられます。

 なお、「これから地価が下がるので郊外の物件は大きく値下がりする。都心の物件でないといけない。」とか「地価が下がりにくい山手線内の物件に限る。」いう内容のWEB記事が散見されますが、利回りが低い物件を購入して赤字運営を強いられるのでは都心の物件を購入する意味がありません。

 景気が現在以上に悪化した場合は地価が下落することが考えられますが、そのときは都心の物件も値下がりする可能性が高いですし、地価がどうなるかはそのときにならないとわかりません。