不動産を購入する際に見落としがちな点(その4、収益用1棟レジ)

収益用1棟レジ(1棟マンション)の売買における重要事項説明において、書面には記載しているのに説明を省略する、またはあまり説明したがらない内容があります。

1.レントロール(賃借人の氏名、賃料等をまとめた資料)
特に、家賃の滞納者がいる物件の場合に、説明を省きたがる傾向があります。
(私の会社では全て説明しています。)

重要事項説明の資料として渡されるものの、説明を省かれることがあります。この場合は、レントロールから読み取れる内容の説明を求めることをお勧めします。問題がある場合は、売主および不動産会社と再協議する必要があります。

「○○号室の住人が家賃を2か月滞納しています」等の説明は、不動産会社としては積極的に行いたくありません。通常、1棟レジの売却は、滞納の問題を解決してから行うことが多いです。しかし、売り急ぐ事情がある場合は、滞納している部屋があるにもかかわらずそのまま売却されることがあります。

滞納が発生している場合、その部屋の賃借人に家賃を督促しているのが通常ですが、賃借人がどのような理由で滞納しているのか、および督促した際の態度も、可能であれば買主として知っておくべき内容です。

2.各部屋における賃貸借契約書
各部屋における賃貸借契約書の確認は必須です。普通賃貸借契約および定期賃貸借契約のいずれなのか、契約更新または終了時期、更新料徴収の有無、連帯保証人が立てられているか否か、保証契約の有無、家賃の支払い方法について、確認しておく必要があります。

連帯保証人を在籍会社またはアリバイ会社を通じて立てていることがあります。この場合、家賃の滞納が発生した際に連帯保証人に求償しても居所が不明である、または十分な資力が無いことから求償に応じてもらえないことがよくあります。

3.管理会社
清掃や家賃の出納を管理会社に委託しており、この管理契約を買主が引き継がなければならないことがあります。この場合は、委託している管理の内容および管理会社に支払う管理委託費を調べ、これが一般的な相場に適合するのかを確認する必要があります。

評判が良くない管理会社が管理していることが、たまにあります。掃除をさぼる、緊急時に対応しない、オーナーに対する家賃の振込が遅れる、空室が発生した際の入居者募集を積極的に行わない、賃借人が退去する際に行う原状回復リフォーム費が極めて高額である等のトラブルです。

具体的なトラブル事例についてはネット上に掲載されていることがあります。ネット上の情報は信憑性にやや欠けることがありますが、具体的なマンション名や問題の内容が詳しく書かれている場合は、話半分としても相応の事実があったものと推察されます。また、同じ管理会社における複数のトラブル事例がヒットする場合は、その管理会社は要注意です。

4.設備の維持修繕、更新に必要な費用
大規模修繕を行った履歴がある場合は実施した内容を確認し、今後修繕を行う際に必要な修繕費の概算を見積もっておく必要があります。大規模修繕を実施したことがある物件では外壁の修繕や塗装、屋上の防水塗装に要した費用の履歴を確認する必要があります。

築浅であるために大規模修繕をまだ実施していない物件の場合も、これらの費用を予め見積もっておく必要があります。

共有設備として特に注意が必要なのはオートロックとエレベーターです。これらの設備には定期的な点検および維持費が発生しますが、先送りにすることは断じて許されません。毎年必ず費用が発生するだけでは無く、更新の際にはかなり多額の費用が発生します。過去の点検内容、維持管理の状況、修繕履歴等を確認する必要があります。

また、各部屋における設備の内容、更新時期、更新内容についても確認が必要です。設備の更新は、8~10年毎に必要になることを考えておく必要があります。自然故障による設備更新に要する費用は、原則としてオーナーが支出しなければなりません。

5.維持費が多額になることを見越して売却される物件に注意
将来(数年~10年先)において、多額の維持費を家賃収入だけで賄えないことがほぼ確実であることから売りに出される物件があります。金融機関から事業用ローンの融資を受けて購入した物件に多いです。

このような物件は事業用ローンの返済が滞ったことから行われる任意売却ではなく、一般的な収益用不動産として売却されます。しかし、これらは事業用ローンを利用して購入する物件ではありません。手持ちの資金が潤沢にあり、誰からも借り入れをすることなく購入できる方でなければ手を出すべきではありません。

購入の候補となる物件について、長期的なキャッシュフローを検討することは必須です。