収益物件のメンテナンスを怠り、事故が発生すると大変です

賃貸アパートの2階にある外廊下が崩落
2020年10月に、北海道の苫小牧で賃貸アパートの2階にある外廊下の床が崩落し、5人が落下して4人が重傷、1人が軽傷を負うという事故が発生しました。5人家族が帰宅し、外廊下前で鍵を開けていたところ、床が突然抜けて3m下に落下したとのことです。(「アパート、廊下、崩落」のキーワードで、多くの報道記事がヒットします。)

この賃貸アパートの外廊下は鉄製であり、建物は築25年程度でした。崩落した原因は、このアパートの立地が海岸から2kmであることから塩害が発生しやすい場所であったにもかかわらず、定期的な塗装を怠っていたことにあると思われます。

塩害が発生しやすい地域で鉄製の廊下や外階段の塗装を怠ると、構造材である鉄に赤さびが生じ、強度が弱くなることから崩落する原因になります。さらに、北海道の物件であることから「凍害」が起きていたのかもしれません。

ペンキが剥がれると、ペンキの層と構造材である鉄との間の隙間から水が入ります。北海道および東北の寒冷地ではこの隙間にしみ込んだ水が凍ることにより膨潤し、ペンキの層を構造材から剥がすことに寄与します。長期間放置するとペンキが少しずつ剥がれることから鉄の構造材が徐々に腐食します。これが凍害です。

このような事故が発生すると、アパートのオーナーは治療費、慰謝料、休業したことによる逸失利益などを賠償するように求められます。賃貸借契約を締結した以上、賃貸物件のオーナーには賃借人を安全に居住させる義務があります。その義務を果たさなかったために事故が発生したと見做されることから、最終的には賠償に応じなければならなくなります。外部の外廊下や階段が鉄製である賃貸物件は定期的に見回りを行い、補修をする必要があります。

この賃貸アパートのオーナーは遠方に居住しており、管理を管理会社に委託していたようです。管理会社は、外廊下が危険であることをオーナーに再三伝えていたようですが、費用が発生することから放置されたようです。このオーナーは、維持費の負担を惜しんだことから多額の損害賠償を請求されることになりました。

管理会社から「修繕が必要な箇所がある」と指摘された場合、オーナーは直ちに現地を確認するべきです。管理会社からの指摘が妥当かを判断出来ない場合は、業者に点検してもらうことが必要です。

また、万が一のために施設賠償責任保険(施設所有管理者賠償責任保険)に加入することは必須であると言えます。

「管理会社に全部任せているから大丈夫」というのは誤り
管理会社から要修繕箇所に関する指摘がない場合でも注意が必要です。オーナーとしては管理会社に任せていれば安心であると考えがちですが、管理会社は複数の管理物件を管理しています。担当者は家賃の出納代行、家賃滞納者への督促、設備故障に関するクレームへの対応、入居者および退去者に対する対応、入居者の募集等で手一杯であり、外壁や共用部の状況までは目が行き届かない担当者が多いです。

管理の担当者は賃貸物件管理のエキスパートですが、建築は専門外であることから知識が乏しいことがあります。このため、本来は修繕が必要なのに見過ごされることがあります。

物件の購入前であればインスペクションを依頼し、補修費および購入後に必要となる維持費がどのくらいなのかを見積もらせることをお勧めします。管理会社に全て任せていれば安心であるというのは誤りです。

北海道の収益物件
最近、投資家の方から北海道の収益物件に関する引き合いが増えています。北海道の物件は土地が安価であることから物件価格が安く、さらに表面利回りが良いことから東京などの大都市の投資家が多く購入しています。しかし、関東以南の物件よりも維持費が高額であることが多く、建物の寿命は総じて短いです。さらに、海岸に近い物件の購入を検討する際には塩害を考慮する必要があります。

物件購入費用が安くても、維持費の算出は欠かせません。特に見落としがちなのは多額の除雪費です。

物件の前面道路が私道である場合、私道の下に設置された融雪装置の維持費、および燃料費を予め見積もる必要があります。この融雪に要する燃料費が極めて高額な物件があります。