「新型コロナウイルスの影響で安い不動産がある」との話に騙されない

2024年2月1日

FNNプライムオンラインの記事(※2024年2月1日非公開化を確認)(Youtube のサイトです。音が出ますのでご注意ください)によると、5億円相当の未公開マンションを1億5千万で購入できるという話を持ちかけられ、現金一括で購入することに応じた買主が、持参した現金を持ち逃げされたとのことです。
(※リンク先は掲載社の都合により削除されることがありますので、予めご了承願います。)

※2024年2月1日追記:リンク先の動画が削除されましたので、リンクを外しました。

最も悪いのは犯人ですが、騙された方にもかなりの落ち度があります
5億円の未公開マンションが1億5千万円で売り出されることは、まずありません。このことを最初に疑うべきでした。通常、未公開物件は、通常の相場よりも高い価格で売り出されます。安く売られる未公開物件には何らかの瑕疵があると疑うべきです。

このような激安物件に関する情報が私の会社に持ち込まれた場合は、最初に情報源、商流表、未公開である理由、心理的瑕疵の有無、建築確認申請および完成検査の有無、居住者のレントロール、担保権者と担保権の内容、所有権移転仮登記などの危険な登記の有無、近隣の環境、前面道路の接道状況、以前の建築物、その他を調査します。その後、査定を独自に行い、購入する場合の適正価格を見積もります。

その上で問題が無いと判断された物件に限り、投資家のお客様に御紹介します。特別に売り急ぐ事情がある物件は自社で購入することがありますが、調査の結果、問題がないと判断された物件に限定しています。

この事件の被害者は「新型コロナウイルスの影響で価格が下がっている」と言われたとのことですが、現在、収益物件の販売価格は上昇傾向にあります。当分の間、値下がりは考えられない状況です。このことについては後述します。

今回の事件における被害者は、未公開物件の売却話に対する十分な調査をしなかった、またはできなかったのでしょう。報道によると、被害に遭ったのは外国の方のようです。外国の方であることから、信用できる売買専門の不動産会社を見つけることが難しく、物件調査の方法もわからなかったのだと思います。

この事件の構図は意外に簡単なのかもしれません。現金を持ち逃げした犯人は、不動産業とは無関係ではないかと思います。不動産業に多少でも関わった経験があれば、「未公開物件が激安で売られている」という話を作り上げるのではなく、もう少し手の込んだ方法を考えたと思います。

ちなみに外国の方が日本国内の不動産を購入する際には金融機関を通さず、現金一括による購入を希望されることがあります。

その理由の一つは、外国の方が日本国内の収益物件を購入するために金融機関から融資(事業用ローン)を引き出そうとしても、金融機関が融資を承認しないことが多いからです。融資先の外国人が突然帰国し、日本に戻らない場合に返済が滞るリスクがあるからです。

また、決済の際に金融機関からの送金を敬遠される方がいます。現金の流れを捕捉されるのが嫌なのだと思います。このような買主は購入金額の全額を現金で用意し、決済の際に売主に渡します。

犯人は不動産に関する知識が乏しいものの、外国人が不動産物件を購入する際には購入代金の全額を現金で持参したがることについては知っていた可能性があります。

通常の不動産売買では、現金の受け渡しは司法書士立ち会いの下で登記必要書類が全て揃っていることを確認した上で行います。今回の事件では売買契約および決済をホテルで行うことにしていたとのことです。不動産会社を利用した取引ではあり得ないことです。

被害者(買主)には落ち度があると言われても仕方ないと思います。

収益物件が値下がりしない理由は、有望な投資先が見つからないから
金融緩和が続いています。投資家は金融機関からの融資を受けやすいのですが、飲食店及び旅行関連業は壊滅的な打撃を受けています。新型コロナウイルス感染症はまだ終息していないことから、今後は間違いなく失業者が現在よりも大きく増えます。消費は伸び悩み、物品販売業やサービス業も不振になった状態で放置されています。

このような社会状況では、現在の生業を一旦廃業し、損失を確定させた上で残った資金を不動産投資に回すことを考える投資家が増えます。従来は、都心の一棟ものの収益用不動産の場合、実質利回り6.5%で運用されることを想定した値付けをしている物件が多かったのですが、最近では実質利回り4%で運用することを前提とした値付けをされている物件でも引き合いがあります。

コロナ禍の影響により収益物件が安く売られることはありません。私の主観ですが、都心にある1棟ものの収益用マンションを購入したいという投資家が増えていることから、コロナ禍になる前の相場より2~3割程度値上がりしている物件が多い感があります。

ということで、今回の事件のように、未公開物件を相場の三分の一以下で売るという話が現実化することはありません。「新型コロナウイルスの影響で安い不動産がある」との話があっても、くれぐれも騙されないようにしてください。