不動産の内見を装った強盗事件が、また発生

2021年4月8日

3月19日、朝日新聞記事からの引用です。(リンク先は掲載社の都合で切れることがあります。予め御了承願います。)

※4月5日追記:掲載社の都合によりリンクが切れましたので、リンクを削除しました。

19日午後5時20分ごろ、東京都墨田区の不動産会社勤務の30代女性が、会社近くの交番に「客に刃物で脅され、財布を奪われた」と届け出た。警視庁は強盗事件とみて調べている。
 深川署によると、19日午後3時半ごろ、女性の勤務先に50代くらいの男と60代くらいの女が東京都江東区内の「マンションの内覧がしたい」と訪れた。
 女性が2人を担当し、希望したマンションに連れて行き室内を案内していたところ、男がカッターナイフのようなものを女性に突きつけた。2人は、女性にはいていたストッキングを脱いで自分で足をしばるよう命じた上で、「金目の物を出せ」と脅したという。
2021年3月19日-朝日新聞記事からの引用

不動産物件の中は密室であり、室内で強盗行為が行われた場合は極めて危険な状況になります。物件の所有者は「お客様」ですから、内見の担当者としては相手をねじ伏せることに自信がある場合でも、格闘を行うことにより設備などを傷つけてしまうことを恐れます。無意識に遠慮してしまい、十分な反撃に出られないことがあります。

昨年の4月にも、横浜市旭区で不動産の内見を行っている際に、「客」が不動産業者の内見担当者を刃物で刺して重傷を負わせ、金品を奪う事件が発生しています。この事件では容疑者が既に逮捕されていますが、「新型コロナの影響で生活に困っていた」と供述しているようです。

コロナ禍で生活苦になったからといって、強盗行為が許されることはありません。最初から強盗を行う目的で内見の申し込みをしており、密室内で一人の女性を襲ったことから計画的な犯行であると思われます。

刑法第240条は、強盗が人を致傷させた場合には6年以上の懲役、死亡させた場合は死刑または無期懲役に処せられることを規定しています。

「死亡させた場合」とは、例えば刃物などで脅された被害者がマンションの一室から脱出する際に誤って転落し、死亡した場合も含まれます。脅したことが原因で「死亡」という結果が生じた以上、強盗致死罪が成立し、死刑または無期懲役刑に処せられることになります。

運用上、無期懲役は服役してから30年が経過したところで、釈放するかに関する最初の審査が行われます。しかし、ここで釈放されることはほとんどなく、次の審査は服役してから40年が経過した後に行われるとのことです。

服役してから40年後の再審査でも、釈放される方は極めて少数のようです。その次の審査は服役してから50年後になります。無期懲役に処せられると、ほとんどが獄死することになるようです。無期懲役刑は、事実上の終身刑と言えるかもしれません。

不動産の内見を担当する従業員が多額の金品を持ち合わせていることは、まずありません。いずれは逮捕され、重罰で処断されるのに、何故このような割の合わない行為を行うのか、全く理解できません。

この事件の他にも客を装い内見を申し込み、内見を行っている室内で強盗行為が行われ、内見の担当者が重軽傷を負う事案、自動車が盗まれる等の事案が数多く発生しています。強盗行為は内見の担当者が女性である場合に行われることが多いようです。おそらくは「内見の担当者を女性にして欲しい」と要望されたことから、女性が対応したものと思われます。極めて悪質です。

私の会社にも「内見の担当者を若い女性にして欲しいのですが、可能ですか」という問い合わせがあります。問合せをされた方が女性である場合は納得できますが、若い男性である場合は全てお断りすることにしています。内見の際に、互いのことを知らない若い男女が密室で二人きりになる状況を生じさせることは危険であるからです。

今後、不動産の内見時に強盗が多発したら
新型コロナウイルス感染症がなかなか終息しないことから失業者が激増しており、今後は強盗のような愚かな行為を行う輩が増えるかもしれません。不動産の内見を装い、密室内で脅せば、強盗行為を容易に行えると考えているのかもしれませんが、極めて愚かです。

このような事件が起きると、被害に遭った従業員だけではなく、同じ社内の同僚も一斉に退職することが多いです。不動産会社としては何人もの貴重な人材を失うので大きな損失になります。

さらに、不動産業界で働きたいという方が激減する原因になるので、業界としても大迷惑です。

今後、不動産会社としては女性一人に内見を担当させることを可能な限り避けることになるでしょう。内見希望者が二名以上である場合は、不動産会社の内見担当を二人以上派遣させるかもしれません。

現在、多くの不動産会社では来店されて内見を希望されたお客様に対し、お名前および連絡先(電話番号)をお尋ねしますが、内見の際に身分証明書を提示していただく会社はほとんどないと思います。

しかし、強盗事案が続くようだと内見の申込時に身分証明書を提示していただくことが必要になる等、「お気軽に内見すること」が難しくなることが予想されます。