不動産売買契約の前後に、売主が新型コロナウイルスに感染した場合(その2)
※昨日の投稿の続きです。
買主への引渡しは、消毒後4日以上経過してからにする
買主において、引渡し時期が延期されることについて了承し、物件の引渡しおよび決済を行うことになったとします。
新型コロナウイルスに感染した売主および同居者が入院、またはホテル療養になったことから感染者が屋内に誰もいない状況になった場合は、保健所の判断により専門業者に消毒してもらうことになると思います。感染者が複数いる場合は、消毒命令が発令されることが多いようです。
その後、売主および同居者が快復して家に戻り、引越をした後、再び専門業者に消毒してもらうことになると思います。家に誰もいない状態が90時間継続していれば、室内のウイルスはほとんど消滅していると思われますが、買主に余計な心配をかけさせないために消毒を再度行うことになると思います。
十分な消毒作業を行っても、完全な消毒は困難です。国立感染症研究所が作成したガイド(新型コロナウイルス感染症に対する感染管理)によると、プラスチックやステンレスの表面上にある新型コロナウイルスは72時間後まで残存すると書かれています。また、プラスチックやステンレスの表面で84時間、耐熱ガラスの表面では86時間残存するとする論文があります。
このため、引き渡し時期は消毒後4日以上を経過してからにすることが望ましいと思います。
新型コロナウイルス感染症に感染した事実は個人のプライバシーに属する
売主またはその同居者が新型コロナウイルスに感染した場合には、昨日の投稿に記載した内容の他に注意が必要な点があります。それは、感染症に感染した事実は個人のプライバシーであることです。
故意に漏洩させる行為は個人情報保護法に反する行為なので、配慮が必要です。
ほぼ毎日のように、感染者に対する誹謗中傷の問題が報道されています。感染者が増えることについては、感染者が悪いわけではありません。しかし、感染することを恐れるあまり、突飛な行動をされる方がいるのが実情です。
不動産売買契約が解約されて売主が元の住居に留まることになった場合、または決済まで進めることができた場合のいずれの場合でも、売主および同居者が感染した事実は口外するべきではないでしょう。不動産会社としては、買主には口外しないようにお願いすることになると思います。特に、近隣の方から訊かれることが想定されますので、配慮が必要であると考えます。
弁護士の中には「買主に対し、口外しないことについての念書や誓約書を提出させるべきである」と言われる先生がいらっしゃいますが、実務上、そこまで要求することは難しいかもしれません。
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