賃貸物件の運営に関する知識が無いのに購入する方が多いのは何故?

 賃貸戸建住宅、または賃貸アパート・マンション等を購入することによる不動産投資を始める方が増えています。多くの方は「現在の収入だけでは将来が不安である」とか、「副収入を不労所得として得たい」という理由で不動産投資の世界に参入します。

 しかし、不動産に対する全く知識が無いのに「不動産会社に任せれば安心」と考え、本来であれば購入してはいけない収益物件を購入してしまい、経営破綻する方が増えています。

 賃貸住宅の運営が破綻する原因の多くは、購入する物件の選択を誤り、いわゆる高値掴みをしてしまうことにあります。

 不動産会社の営業担当による流暢なセールストークに騙され、予定通りの収入が得られない、または購入した時点で運営が大赤字になることが確定している物件を購入してしまうことがよくあります。

数多くある不動産業者の中には質の良くない業者が存在する
 地域の家賃相場を無視した高額な家賃収入を得られるとして売り出している物件があります。私自身が相談を受けた事例の中には、表面利回りが極めて高い物件であることをアピールする目的で、地域相場の7割増しの家賃を想定賃料として売り出している物件がありました。

 また、新築物件の場合に多いのですが、いわゆる「サクラ」を入居させ、現況満室であるとして売り出している物件があります。

 購入後、2~3か月は家賃が振り込まれるものの、その後は徐々に退去して空室だらけになります。新たな入居者を募集しても、設定されている家賃が相場よりも極めて高額であることから家賃を3分の2程度迄下げないと入居者が決まらないことがよくあります。このような物件を購入してしまうと、それ程遠くない時期に経営破綻します。

 特に事業用ローンにより物件を購入した場合はローンの返済が出来なくなり、全財産を散り上げられた上に破産宣告を受けてしまう方が多くいらっしゃいます。

 収益用不動産を購入する方は「消費者」とは見做されませんので、消費者としての保護を受けられません。何らかの問題が生じ、不動産業者に損害賠償を請求する場合は自ら民事裁判を提起する必要があります。

 想定賃料が適正であるかについては、購入希望者において自ら調査する必要があります。不動産業者の営業トークを鵜呑みにせず、検証する必要があります。

 もちろん採算が合わないことが判明した場合は、その物件の購入を控えるべきです。

維持費、税金の支払いを全く考えていない物件がある
 現在、収益用不動産の人気がうなぎ登りであり、東京都区内の物件における利回りはかなり低迷しています。中には表面利回りが3~4%台の物件があります。

 しかし、空室になると次の入居者が決まるまで、賃料収入を得られません。設備が故障した際は修理費が必要です。外壁塗装および共用部清掃などの維持費、固定資産税、都市計画税は空室の有無にかかわらず必要です。さらに、運営の主体が個人であれば所得税、法人の場合は法人税および事業税の支払いが必要になります。

 表面利回りが3~4%台の物件では、複数の入居者が同時に退去する等の事態が起きれば直ちに経営破綻する恐れがあります。

 特に物件を購入する際に事業用ローンを利用している場合は、経営が成り立たなくなることが明らかです。

初めてオーナーになる方の中には、家賃の滞納を想定していない方がいる
 家賃を滞納する方がいる場合、不動産会社に依頼すれば直ちに追い出してくれると錯覚しているオーナー様がいらっしゃいます。借地借家法が定める、退去を要求するための必要要件を全く理解していないのです。

 退去を申し入れる主体はオーナー様であり、必要に応じて明け渡し請求を求める裁判を提起する必要があること、裁判所に訴状を提出するためには最低で3か月の家賃滞納が続いていなければならないこと、貸室内にある物品の移動および廃棄は法律が禁止(自力救済禁止の法理)していること等について、全く知らない方がいらっしゃいます。

 賃貸住宅の運営を始めるオーナー様向けの本は、多数出版されています。あまりにも多いので、本の名前はここでは取り上げませんが、物件の購入前にお読みいただくことをお勧めします。

賃貸経営のリスクを知らないーナー様が多いのは何故
 「簡単に儲かる」、「不労所得になる」というイメージがあることが理由であると思います。残念なことに、質が良くない不動産業者の営業担当の中には、楽に儲けられるシステムであることを強調する輩がいます。

 オーナー様におかれては、不動産業者の営業担当者に言われるままに物事を決めるのではなく、堂々と意見を述べることが出来る程度の知識を蓄え、騙されないようにする必要があります。知識で武装することにより、悪徳不動産業者から身を守ることが可能になります。