収益用不動産を購入する際における注意点(その2、賃料収入)

2020年9月28日

昨日の投稿では、収益用不動産を購入する際には実質利回りの概算を算出しておくべきである旨を説明しました。本日は、賃料が妥当であるかについての検証が必要であることを書きます。

実質利回りを算出するには、現時点における賃料収入の総額がいくらなのかを知る必要があります。

中古の収益用不動産が、購入対象の候補になった場合

その物件のレントロールを不動産会社に請求してください。レントロールとは、各部屋の賃料、賃貸中または空室の別、賃借人のプロフィール(例:30歳台男性、会社員)を一覧にまとめたものです。

不動産会社から「お話をある程度うかがわないと差し上げられない。」などと言われることがあります。レントロールは売主の個人情報です。また、レントロールが賃借人の手に渡ると大きなトラブルになりますので仕方ありません。

楽待や健美家等のポータルサイトを見た方が売主側の不動産会社(元付業者)に1本の電話、または1通のメールのみで直接請求しても、それだけでは応じてもらえないことがよくあります。面倒でも不動産会社に出向き、お名前と連絡先を告げ、条件が合致すれば購入する意思を伝えた場合に初めてもらえる書類であると思ってください。
なお、元付業者以外の不動産会社を経由してレントロールを請求することも可能です。その際は、その不動産会社の信用で元付業者からレントロールを貰えることが多いです。

ただし、レントロールをもらった後に購入することを決めた際は、その後に元付業者のところには行かず、レントロールをもらった不動産会社経由で購入してください。トラブル防止のために必要です。
仲介手数料は変わりませんし、元付業者以外の不動産会社を通して購入する方が、大きな値引きを引き出せることが多いです。

レントロールを見ると、様々なことがわかります。満室稼働中なのか、空室が何室あるのかは明確にわかります。賃借人の多くが若者なのか、それとも高齢者なのか、男性および女性のどちらが多いのかもわかることが多いです。

賃料が極端に安い部屋が一室あったとします。この場合、この部屋の賃借人は売主(オーナー)の親族であることが多いですが、心理的瑕疵(自殺、不審死など)のある部屋である場合がありますので注意が必要です。心理的瑕疵のある部屋は、賃料を下げざるを得ません。

賃料を滞納している部屋の有無についても確認が必要です。長期間、家賃の滞納を続けている賃借人がいる場合は、現オーナーにおいて退去に向けた交渉を開始しているのか、開始していない場合にはその理由を尋ねる必要があります。退去の見通しがある場合は、退去後に契約することも検討しておきます。

空室や滞納の部屋がある場合は賃料収入が低くなりますが、この状態における賃料収入を基準として実質利回りを計算し、購入の可否を判断する材料の一つにします。

なお、空室が多い物件や滞納者が多い物件は、金融機関の評価が低くなりがちであり、貸し出し可能金額が大きく減額されることがあります。

新築の収益用不動産が、購入対象の候補になった場合

新築物件にはレントロールがまだありません。その代わりに各室の想定賃料一覧表を貰えると思いますが、これをそのまま鵜呑みにしてはいけません。後述しますが、想定賃料を膨らませていることがありますので、全て自分で計算し直す必要があります。

賃貸物件の賃料には単位面積当たりの相場が存在します。通常は、室内の面積により賃料が決定します。私の会社事務所がある東京都の目黒区における賃料相場は、坪当たり1万1千円~1万2千円です。新築やペット飼育可の物件は、坪当たりの賃料1万3千円程度で取引されています。

室内面積20㎡の部屋の場合、面積は6.05坪の部屋になります。賃料の相場は6.05×11,000円=66,500円から6.05×12,000円=73,800円です。中間を取ると月賃料の相場は約70,000円となります。
新築物件、またはペット飼育可の物件であれば、6.05×13,000円=78,650円なので約78,000円が相場となります。

しかし、新築の収益用物件では想定賃料を大きく膨らましていることが多いので注意が必要です。想定賃料を相場の5割増しで設定している物件を見つけたことがあります。賃料収入を意図的に膨らませることにより、表面利回り、実質利回りを実際よりも誇張して購入希望者を募っているのです。

不動産投資が初めての方は、「新築であれば、当分の間は設備の故障は発生しないだろうし、入居者の募集も容易である。」として、大きく盛られた想定賃料に騙されてこのような物件を購入しがちですが、後悔される方が多いので注意が必要です。

このような物件を購入した場合でも「事業用」の物件に関する取引なので、購入された方は「消費者」とは見做されず、「消費者」としての保護は受けられません。「思うような賃料収入を得られない。騙された。」と言っても後の祭りです。「騙された」ことについての立証責任は購入者側にありますが、その証明は極めて困難です。

相場より高い賃料の物件では、借主を募集しても、入居される方はほとんどいません。満室にするために相場まで賃料を下げた結果、金融機関から受けた融資の返済ができなくなり、破産に追い込まれた事案が数多くあります。

新築の収益用物件の購入を検討する際には、その地域における賃貸物件の賃料相場を予め調べておく必要があります。その方法は簡単です。アットホームやスーモなどのポータルサイトで、購入候補である物件の所在地を指定して賃貸物件の検索を行うことにより、相場がわかります。築10~20年程度の賃貸マンションの募集賃料が最も相場に近いといえます。

坪当たり、または1㎡当たりの賃料を算出し、これを購入候補である物件における各室に当てはめます。新築なので、当てはめて算出した賃料に1割程度の金額を上乗せすれば、各室におけるおおよその賃料を推定できます。

各室における想定賃料の合計より年間の総収入を計算し、この金額から表面利回りおよび実質利回りを算出し、依然として購入候補に成り得るかを検討します。

新築物件の想定賃料は自分で計算し直し、売主である不動産会社が提示する想定賃料との整合性を確認する必要があります。あまりにもかけ離れている場合は「売主である不動産会社の体質」を疑う必要があります。このような業者が建築する物件を購入すると、予期しないトラブルに巻き込まれる恐れがありますのでご注意ください。