単身者向け収益用区分マンションへの投資は、慎重に行えば怖くない

都区内において賃貸用マンションを1棟購入する場合には、概ね3億円以上の資金が必要です。しかし、単身者用のワンルームまたは1Kの収益用区分マンションは1件あたり700~1200万円程度で購入できます。会社勤めの方でも本気になれば手が届く方が多い金額です。

このため、収益用不動産を購入したことがない方やサラリーマン向けの収益用不動産として、単身者向けの収益用区分マンションが売り出されています。「1部屋を購入しただけで大家になれます」というセールストークがよく利用されます。

ところが、不動産の解説本やWEBサイトにおいて「ワンルームや1Kの単身者向け収益用区分マンションは投資詐欺に利用される」とか、「破産するから絶対に買ってはいけない」、「単身者向けの区分マンションは投資詐欺を目的に建設されている」等の記事を良く見かけます。

私が思うに、これらの記事は極めて乱暴な見解です。とても受け入れることはできません。

破産された方の多くは元々利益が出ない物件を購入したか、破産が約束されているとしか思えない高利率の事業者用ローンを利用する等、無謀な条件で購入しています。無謀な条件で購入したことに原因があり、これは単身者用区分マンションに限定される話ではありません。

不動産に関する知識に乏しい方が、質の良くない不動産会社の営業担当に出会い、営業担当が勧めるままに購入を決断すると、とんでもない悲劇に見舞われます。不動産に関する知識が乏しい間は、不動産投資の世界に安易に参入するべきではありません。これは単身者用の区分マンション、1棟マンションのいずれにも当てはまります。お客様のことを親身に考えてくれる不動産会社の営業担当を探しだし、情報を少しずつ入手してから参入することをお勧めします。

不動産会社の営業担当はノルマに追われています。不動産投資を始めて行う方や知識が無い方には、相場より高額な物件や、ベテランの投資家であれば絶対に購入しない不人気な物件を薦めがちです。

また、金融機関においても高利率の事業用ローンの貸し付け実績が欲しいため、担当者が「この条件では返済が滞るかもしれない」と思った場合でも、貸し付けてしまうことがあります。ベテランの投資家であれば断る融資条件でも、不動産投資を始めて行う方や知識が無い方は受け入れてしまいがちです。

1棟ものの収益用賃貸マンションの場合、全室が一斉に退去することはまずありません。空室が発生したり、一部の賃借人が賃料を滞納した場合でも、家賃収入がゼロになることはほとんどありません。

しかし、単身者用区分マンションを1室しか保有していない場合、空室期間が発生したり賃借人が賃料を滞納すると家賃収入はゼロになります。この場合でも管理費および修繕積立金が毎月発生しますし、固定資産税および都市計画税の支払も必要です。事業用ローンを利用して購入した場合は、その返済も必要です。この状況が何ヶ月も続くと手持ちの資金がなくなり、破産に追い込まれることがあります。

単身者向けの賃貸用区分マンションを購入した方が破綻する主な理由

・収益性が低い物件を購入した。
 安い物件であれは収益性が良いと勘違いされている方が多いですが、誤りです。
 安くても入居希望者がなかなか現れない物件は、収益性が低いです。

・空室期間長期化や賃料の滞納を考えないで物件を購入した。

・金融機関が提案した無謀な返済プランによる融資を受けた。

単身者向けの収益用区分マンションは、以下の条件で購入すれば怖くありません。

・空室期間、または賃料の滞納期間が1年程度継続したとしても耐えられる資金を手元に確保する。
 賃料を長期滞納している賃借人を裁判で退去させる場合は、6~8か月を要する。

・交通の便が良く、利回りが良く、かつあまり古くない物件を選ぶ。
 空室期間をなるべく短くするため。

・空室期間が長くなる要素がある物件は、安くても購入しない。
 心理的瑕疵のある物件、ハトや野良猫を招き入れる性癖がある住人が居住する物件は避ける。
 オートロックの故障が放置されているために、常時開放されている物件は避ける。
 駅近かつ防犯面の対応が十分である場合を除き、1階の物件は避ける。
 鉄道の線路際、踏切の近く、谷間、高圧電線の鉄塔近く、眺望不良、嫌悪施設近くの物件は避ける。

・サブリース契約が必須の物件は購入しない。
 少しでも利回りをよくするため。

・管理費、修繕積立金が高額な物件は避ける。
 管理費および修繕積立金の合計が1万3千円を超える物件は購入しない。
 将来的な値上げを予定している物件は、値上げ後の金額を予め確認する。

・管理組合がある物件に限定する。
 自主管理のマンションには、トラブルを起こしやすい住人やクレーマーが多い。

・金融機関から融資を受ける場合、実質利回り6.5%を超える物件に限定する。
 事業用ローンの利率は2.5~3%前後のところが多い。
 差し引き4%程度の利回りすら得られない物件は、保有する意味が無い。

・高利率(3%超など)の融資条件が提示された場合、その金融機関の利用は避ける。
 無理な返済プランであり、受け入れる必要は無い。

・可能であれば、金融機関からの融資を受けずに現金一括払で購入する。