非公開物件について(その1、実需用物件の場合)

※おことわり
本日の投稿内容は、あくまでも実需用(購入者が自分の住居または事務所として利用する目的)の不動産に関する内容であり、アパートやマンションなどの収益用物件には当てはまりません。収益用物件における非公開物件については明日の投稿において書きます。

私の会社事務所に来店されるお客様から「不動産を買いたいが、非公開物件の中から探したいので、非公開物件の一覧表が欲しい。」と言われることが増えています。

来店されたお客様に、当社では一覧表を作成していないことを伝えると「良い物件は非公開物件の中にしかない。大手の○○不動産(の営業担当)が言っているのだから間違いない。非公開物件がないなら用はない。」と言ってお帰りになりました。

非公開物件の一覧表を作成したとしても、不動産会社における内部管理用の資料です。一般のお客様に配布することはあり得ません。そもそも「非公開物件」とは何らかの事情により一般の方に公開できないか、これから公開する「未公開」の物件のことであり、良い物件であるとは限りません。

当然ですが、一見のお客様に紹介できる不動産ではありません。しかし、大手の営業担当が「良い物件は非公開物件にしかない」等の大嘘をついているようです。
「良い物件は非公開物件の中にしかない。」と思われているお客様が大変に多いので驚かされます。

売却依頼を受けた場合の販売活動

概ね、以下の要領で行われることが多いです。

1.物件の売却依頼を受ける。
2.査定、物件概要書の作成、調査
3.売却依頼された不動産会社に直接ついているお客様への紹介
4.この不動産会社が信用している他の不動産会社への紹介(客付依頼)
5.レインズへの登録
 (専属専任媒介:依頼日から5日以内、専任媒介:依頼日から7日以内、一般媒介:登録は任意)
6.インターネット(アットホーム、スーモなどのポータルサイト)掲載
7.チラシ広告の作成と配布、住宅情報誌への掲載

非公開物件とは

「非公開物件」とは1~4のレインズ未登録の状態である物件、または依頼者の希望により一般媒介契約が締結され、レインズに登録しない物件のことをいいます。(注:東京における基準)

レインズに登録されている物件は、非公開物件ではありません。

物件の数が多いといわれる大手の不動産仲介会社(パワービルダーや建売住宅の建設業者を除く)でも、本当に「非公開物件」といえる不動産の数(土地、戸建、マンションの合計)は常に数件程度であると思われます。意外かもしれませんが、数はそれ程多くありません。

まだ誰にも紹介していないに等しく、かつ数がとても少ない物件を一覧表にした上で一見のお客様にお渡しできるわけがありません。購入希望者が不動産会社と何回か相談し、不動産会社において、その物件が購入希望者の希望条件と合致すると判断された場合にはじめて「この物件をお客様に紹介しよう。」ということになり、紹介を受けられるのです。

「非公開物件の一覧表」が配布されているのであれば、それは「レインズ登録まで行われた物件の一覧表」であると思われます。非公開物件の一覧ではありません。

これとは別に「会員登録をすれば非公開物件を見ることができます。」と謳うWEBサイトがありますが、そもそも非公開物件は一見のお客様に公開するのになじまず、一箇所で数多く集めることはできません。大半は「レインズ登録されている物件の一覧」であると思われます。なお、このような方法で、WEBサイトに登録しただけの方にレインズ登録物件を公開することは、レインズの利用規約に反します。

非公開物件は良い物件か

そもそも、非公開物件は本当に良い物件かというと、必ずしもそうではありません。売却を依頼されたばかりの不動産の大半は、その価格が相場よりかなり高めです。売主様は強気であり、値引きをお願いしても承諾してくれないことが多いです。

それに「公開したらすぐに売れてしまいますから、すぐに決められた方が良いですよ。」等が殺し文句です。心理的に焦らされることが多く、購入するか否かについて即断を迫られるという問題があります。慌てて買ってしまうと、物件そのものだけではなく、立地や環境等についても不満な点が後で多く出て来ることが多いです。

また、大手の不動産会社で「良い物件は非公開物件にしかない」等の戯れ言を言う営業担当がいるようですが、これはその会社が預かっている数少ない未公開物件の中から成約させ、仲介手数料を両手取引(売主および買主の両方からもらう)で得ようとしている故の言葉であると思います。両手手数料が欲しいことから、あまり質の良くない営業担当の場合にこのような嘘をつきますので注意が必要です。

芸能人や著名人が利用していた邸宅、別荘などが売り出される場合も「非公開物件」になることが多いです。これらの物件は庭園の管理を義務づける、購入後何年かは再建築しない等の条件がつくことが多い上に、著名人が利用していたという理由でプレミアム価格を上乗せしていることが多いです。

崖地や洪水が頻繁に発生する土地、権利関係が複雑すぎてスムーズな引渡を保証できない物件、地中埋設物が出てくる恐れがある土地の場合も、一般媒介契約を締結した上で非公開物件にすることがあります。これらは一般のお客様に紹介されることはほとんどなく、最終的には多少の問題がある物件でも買い取る専門の業者に引き取られることが多いです。

不動産を購入される際には非公開物件にこだわらす、全ての物件の中から気に入った物件を探すことを強くお勧めします。そのためには不動産会社の信頼できる営業担当を見つけ、よく相談した上で本当の意味で良い物件を探してもらうのが最良であると思います。