「ペット飼育不可」の賃貸物件を「飼育可」にすることの是非

空き家対策として「ペット飼育可」に転換したいと考えるオーナー様
ご承知の通りのコロナ禍であることから、特に都心では空き物件が増加しています。特に単身者用のワンルーム、および1Kの賃貸物件は空前とも言えるほどに空室だらけの状況です。

主な原因は、飲食店や小売業が休業または営業時間を短縮し、若い従業員に対する解雇や賃金カットが行われたことにあります。都心の賃貸物件における高額な家賃を支払えないとして、郊外に引っ越してしまいました。

都心では酒を出す飲食店の閉店要請、および酒を出さない飲食店に対する営業時間の短縮が要請されていることから、特に単身者は寂しい生活をすることを余儀なくされています。このため、犬や猫などのペットを飼育し始める方が増えています。

このような社会状況であることから、「ペット飼育不可」の賃貸住宅を運営しているオーナー様の中には「『ペット飼育可』に転換することにより相場よりやや高めの家賃を受け取れ、さらに空室期間を短く出来るのではないか」とお考えになる方がいらっしゃいます。

「ペット飼育不可」の賃貸物件を「ペット飼育可」にする際の問題点
1.以前から居住している方に対する問題
動物の毛などに対するアレルギーをお持ちの方、動物臭が嫌いな方は、意図的に「ペット飼育不可」の物件であることを確認した上で入居しています。「ペット飼育不可」のところをわざわざ探して入居している賃借人は、オーナー様が「ペット飼育可」にすることについて納得しません。

強引に「ペット飼育可」にすると、このことが原因で退去することがあります。そればかりか、引越代および転居先の入居費用を請求されることがあります。

2.動物の臭いや鳴き声の問題
糞尿に対するしつけが出来ている場合でも、ある程度の臭いの発生が避けられません。他の居住者からクレームが生じる事が容易に想定されます。

また、賃貸物件の近隣にお住まいの方から「動物の鳴き声がうるさい」とのクレームが来る事があります。防音対策をどのようにするかが問題になります。

3.建物が傷む原因になるが、修繕費を敷金で賄えないことがある
猫の場合、壁クロスや床のフローリング材、柱等に爪を立て、傷つけることがあります。また、ペットが糞尿に対する躾を受けていないことがあります。このような場合には床のフローリング材に糞尿の臭いが吸着し、退去後に床のフローリング材を全て交換しなければならないことがあります。

ちなみにタバコ臭に対する消臭剤は開発されていますが、動物臭を消臭できる消臭剤はまだ開発されていません。このため、臭いを消すためには壁クロスや床材の交換が必要になることが多いです。入居開始から1~2年程度しか経過していなくても、壁クロスおよび床材の全面張り替えが必要になることがあります。

床材の全面交換は、敷金を多めに預かっている場合(賃料2~3か月相当額)でも、敷金のみで賄うことは困難です。退去した方に請求しても、支払い能力が無いために回収できないことがあります。この場合はオーナー様が負担するしかありません。

また、糞尿が床材の下に達し、梁や柱に付着することがあります。これが原因で梁や柱が損傷し、建物の強度が大きく劣化することがあります。このような状態になると、莫大な修繕費を要します。

「ペット飼育可」に転換できない建物がある
「ペット飼育可」にするためには、床材の交換を容易に行える物件であることが必要です。また、糞尿が床材の下に達しても梁や柱に付着しないか、付着しても梁や柱を傷めない構造にしておく必要があります。

このため、「ペット飼育可」として運用することを想定していない木造、または鉄骨造の建物を「ペット飼育可」に転換することはお勧めできません。特に木造の場合は困難です。

また、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の場合でも床材が二重床である、または床暖房が設置されている場合には床材の交換が困難であり、「ペット飼育可」への転換を推奨できない物件があります。

まとめ
「ペット飼育可」にすれば、家賃を5~10%程度高く徴収できますし、敷金も賃料の1か月を上乗せすることが可能です。しかし、「ペット飼育不可」の物件を「ペット飼育可」に転換することは、上述した理由によりお勧めできないのが現状です。

「ペット飼育可」として運営するためには全室に一旦退去してもらい、「ペット飼育可」に対応するようにフルリノベーションを行うことが必要であると思います。