1棟ものの収益用不動産を購入する際は探索エリアをやや広げることをお勧め

 本題に入る前に、1棟アパートおよび1棟マンションの供給状況について解説します。11月11日に投稿した内容と一部重複する箇所がありますが、若干の追加があります。

1棟アパート、1棟マンションの新築物件は少なくなる

 今後は1棟アパートおよび1棟マンションの建設が抑制されるので、新築物件は少なくなると予想しています。資材価格が高騰しただけではなく、金融機関による融資の審査が厳しくなってきたからです。

 土地の所有者が1棟ものの収益用不動産を新築する場合、その土地に担保権(抵当権または根抵当権)が設定されていなければ、担保権を設定することを条件として金融機関は融資を前向きに検討してくれます。または、総工費の半額程度の自己資金を用意できる場合であれば前向きに対応してくれます。

 それ以外の場合は融資の審査がかなり厳しくなっています。不動産会社または建設会社が融資を受け、販売目的の1棟アパートや1棟マンションを建築する場合も同様であり、融資が否認されることが増えています。

 その理由は以下の通りです。

1.建築資材の価格が急騰しており、値下がりする目途が立たない
2.給湯器などの室内設備を調達できないことから竣工が遅れる事案が増えている
3.東京都区内における新築物件は表面利回り3%程度であり、利回りが低いので買主がなかなか見つからない

 今後は、1棟アパートおよび1棟マンションの新築物件はかなり少なくなると思われます。

中古物件は、売り出される物件の数が激減

 中古の1棟アパート、1棟マンションについてはコロナ禍の長期化による他業種からの資金流入により相場が高騰しました。 

 一時は売主の言い値で売れる状況になり、現在、東京都区内は表面利回り5.5%未満の物件ばかりになっています。コロナ禍になる前は8~10%超の物件が大半でした。

 東京都区部以外のエリアにある収益用不動産の表面利回りもかなり低下しています。数年前は12~15%超の物件が多かったエリアでも7~10%程度に低下しています。

 部屋数が多い、または利便性が良好な物件などに買い替えたいと思っても、買い替えた途端に利回りが著しく下がります。これでは買い替えが困難です。

 中古の収益用不動産が売り出されるのは「買い替え」の際であることがほとんどなので、新たに売り出される中古の1棟アパート、1棟マンションの数は激減しています。 

 探しているお客様が多くいらっしゃいますが、売物件が非常に少ない状況です。この傾向は当分の間継続すると思われます。

販売価格が大きく変化することは考えにくい

 「不動産は間違いなく値下がりするので今は買わない方が良い」と力説する著名YouTuberやジャーナリスト、コメンテーター等がいます。根拠は「物価の上昇を抑制するために日銀が利上げをするので景気が悪くなり、不動産が売れなくなるから」とか「現在の日銀総裁が退任すれば為替介入をするので円高になるから」というものです。

 しかし、日銀による利上げは非常に困難であり政府が容認しないと思われます。その理由は10月29日の投稿を参照願います。また、大規模な為替介入を行うとアメリカ等から為替操作国と認定され、経済制裁を受ける恐れがあることから大規模な為替介入は極めて困難です。

 ここ数日の間に多少は円高になりました。それでも1ドル139~141円前後の円安傾向が続いています。このため、海外の投資会社や外国の資産家が日本国内にある収益用不動産の購入を検討しており、売買の成約件数が増え始めています。 

 買主として外国勢が参入しています。購入希望者が多いと売主は値下げに応じません。したがって、現在の高値は当分の間続くと思います。

 上述した著名YouTuberやジャーナリスト、コメンテーター等は外国資本の存在を忘れています。

本題

 1棟ものの収益用不動産を購入する際は探索エリアを広げることをお勧めします。その理由は売り出されている収益用不動産の物件数が極めて少ないからです。 

 「自宅から近い物件であれば自主管理が可能」であることから「○○駅から徒歩5分以内の物件に限定したい」とか、「○○町の1丁目か2丁目の物件に限定して探して欲しい」等の要望を受けることがよくあります。

 しかし、これでは探索範囲が狭すぎるので希望条件に該当する物件を探し出すまでにかなりの日数を要します。特定の駅や町名に限定することなく、「○○線の沿線」、「△△区か××区で最寄り駅から徒歩15分以内」等のレベルに探索範囲を広げることをお勧めします。

 ちなみに自宅からやや離れた立地であっても利回りがやや高めの物件を購入し、管理を管理会社に委託する方が効率が良い場合があります。

 「利回りが良い物件を探したくても東京都区内の物件は利回りが低い」と言われそうですが、東京都内でも千葉県や埼玉県に近いエリアに立地する物件の中には利回りが良好な物件があります。

 神奈川県(川崎、横浜、厚木、藤沢)、埼玉県南部(川口、浦和、所沢など)、東京都の多摩エリアにおけるJR中央線沿線(国分寺、立川、八王子など)も利回りが良好な物件を見つけられることがよくあります。ただし、一室あたりの賃料は東京都23区内の物件よりもかなり低くなります。 

 人口の多いエリアであれば賃貸物件に対する需要がそれなりにあります。このようなエリアであれば利回りが良好であり、かつ空室が生じても次の入居者が早期に決まる物件を探すことは、それ程難しくありません。

※収益用不動産の購入および運営は自己責任でお願いします。このブログの記載内容に従って行動したことにより損失が発生した場合でも、筆者および筆者が所属する有限会社大森不動産は一切の責任を負いません。