賃貸不動産の運営による収入は、不労所得ではない

2022年1月15日

 「老後には2000万円が必要である」というフレーズが一人歩きしています。コロナ禍が長期化して収入が少なくなった方が増えたこともあり、何らかの副業を始めたいと考えている方が多いようです。

 副業として何を始めるかが問題になりますが、大半の方は収入を不労所得として得られるものを考えるようです。そして賃貸アパートや賃貸マンションなどの収益用不動産の運営により得られる収入は不労所得であると考え、収益用不動産を購入して運用する方が激増しています。

 しかし、収益用不動産を運営する場合には様々なリスクがあります。代表的なものは入居者の家賃滞納ですが、その他にも様々なトラブルが発生します。

 トラブルが発生した際には当事者、すなわちオーナー様(賃貸人)と入居者(賃借人)との話し合いで解決することになりますが、解決できない場合は法に則った対応が必要になります。

 オーナー様においては民法、借地借家法等の法律、条例に関するある程度の知識を蓄えておくことが必要です。場合により明け渡しを求める民事裁判を提起しなければならないことがあるからです。

 家賃を滞納する入居者への対応、空室発生時におけるリフォーム内容の検討、入居者募集の方法等についてもオーナー様が自ら検討し、判断しなければならないことが多くあります。

 特に家賃滞納への対処は難しいです。いわゆる「追い出し屋」を利用して力ずくで追い出すと、賃借人から訴えられることがあります。この場合、オーナー様は極めて不利な立場に追い込まれ、多額の損害賠償請求に応じなければならなくなることが大半です。特に、東京都内で追い出し屋を利用することは得策ではありません。

 一部の不動産仲介業者が「追い出し屋」の利用を勧めることがあるようですが、裁判に発展した場合には「追い出し屋の利用を決めたのはオーナーである」とされます。「不動産仲介業者から勧められた」と主張しても、その主張は却下されます。

 定期的に行わなければならない大規模修繕、エレベーターやオートロック設備の入れ替えについても予算化し、いつの時期にどれだけの予算で行うかを予め見積もる必要があります。工事の時期が近づいたら業者に見積もりをすることになります。

 工事業者の選定、および工事内容の策定を管理業者に全面的に任せることは避けるのが賢明です。工事の項目に必ずしも必要ではない工事を盛り込まれ、多額の費用を請求されることがあるからです。

 「全て管理会社に任せれば良い。サブリースなら安心。」とお考えの方が多くいらっしゃいますが、サブリース契約における特約の中にオーナーが一方的に不利になる内容が定められ、多額の財産を失うことがよくあります。法律および条例に関する知識がないと不利な内容で管理契約を締結し、収益用不動産の運営が破綻します。

 賃貸不動産(収益用不動産)の運営により得られる収入は、不労所得ではありません。収益用不動産の運用には相応の労力を要しますし、ある程度の時間も必要になるからです。