コロナ禍が収益用不動産の売買に及ぼす影響

新型コロナウイルス禍がなかなか収束しません。収益用不動産の売買にも様々な影響が出ています。

居住用収益不動産(賃貸アパートおよび賃貸マンション)
ここ数年の間、有望な投資先が見つからないという理由により、金融機関が収益物件の建設に対する融資を積極的に行いました。その際に、節税できることをアピールしたため、新築の賃貸パートや賃貸マンションの供給が過剰である感があります。特に都心におけるワンルームや1K等の単身者用賃貸マンションの数は、需要を大きく上回っています。

コロナ禍が収束しないことから懸念されるのは、家賃の滞納が増えることと空室率の増加です。特に飲食店や小売業に従事されている方に多いのですが、勤め先の倒産や廃業により失業する方が増えています。失業手当の給付期間が満了しても再就職ができない方が増えており、家賃の滞納、または退去につながっています。

特に都心の単身者用賃貸住宅では、一旦空室になると新しい入居者がすぐには決まらない状況です。多くの単身者が賃料が安い郊外の物件に転居してしまい、都心の物件への入居を希望される方は激減しています。

また、新型コロナウイルスに感染することを恐れるため、内見を避けたいという方が増えていることも拍車をかけています。

コロナ禍のために賃金をカットされたとして、入居者が一時的な家賃の値下げを要望することがよくあります。オーナーは要望を断わることができますが、断ったために退去されるよりも家賃の値下げを受け入れ、入居を継続してもらった方が得な場合があります。

言うまでも無く、家賃の滞納はオーナーにとって一大事です。転居先が見つからないという理由で居座る方がいますが、どうしても家賃の支払いに応じてもらえない場合は明け渡し請求の裁判を提起することになります。

しかし、昨年における緊急事態宣言の発出以降、裁判所による裁判手続きが遅延しており、強制執行まで行う場合は8~12か月を要します。ワンルームマンションの一室でも、強制執行まで行った場合の裁判費用は50~80万円以上を要することが多いです。

また、家賃滞納の原因が新型コロナウイルス感染症による失業である場合、滞納期間が3か月継続しているにもかかわらず裁判所書記官の判断により訴状を受け取らない事案があるようです。家賃滞納の原因が新型コロナウイルス感染症による失業の場合には訴状を受理しないとの通達はありません。しかし、裁判所書記官の心証により個別に判断しているようです。

以上の状況なので、賃貸アパートまたは賃貸用マンションの購入を予定している場合は、購入しても大丈夫かをよく吟味する必要があります。

なお、都心の単身者用ワンルームまたは1Kのマンションの購入は、コロナ禍が収束するまで控えるのが賢明だと考えます。

飲食店などのテナントが入居している収益用不動産
1棟ものの収益不動産の中には飲食店やマッサージ店、スポーツクラブが入居している物件があります。これらの店舗はコロナ禍のために売上げが激減しています。多くの物件において家賃の滞納や支払遅延が発生し、賃料の値下げ要望があります。

このような収益用不動産の購入を検討する際には、入居しているテナントの倒産や廃業が発生した場合のリスクを考えておく必要があります。

倒産または廃業の場合、厨房設備等の撤去や原状回復工事に要する費用はオーナー負担になることがあります。本来はテナント(賃借人)が負担するべき費用ですが、「無い袖は振れぬ」のことわざ通り、支払能力が無いことがほとんどであり、オーナーが負担しなければならないことがあります。

飲食店、マッサージ店等が入居しているという理由で、収益用の1棟ビルを売却したいというオーナーが増えています。相場より安めの物件がありますが、購入に際してはリスクを検討しておく必要があります。収益用不動産の購入経験があまりない方は、コロナ禍が収束するまで購入を控えるのが賢明です。