収益用不動産の現地訪問、空室の内見等を拒否された場合

 「老後には2千万円以上の蓄えが必要」というプロパガンダのためか、収益用不動産に対するニーズが高まっています。私の会社にも1棟もののマンションやアパートを購入したいという問合せが数多くあります。

 収益用不動産を紙資料またはPDFファイルで紹介されたことから現地訪問と内見を依頼したところ、「賃貸中なので内見しても仕方ありません。現地訪問も無意味です。」と言われたとか、レントロールを閲覧したいと申し出たところ「ウチでは作成していません。」と言われたという方がたまにいらっしゃいます。

 そのような状況でしつこく契約を勧められた場合は、少なくともその不動産会社の利用を避けるべきです。以下、詳しく書きます。

1.収益用不動産で、現地訪問を断わられる物件は購入しないのが賢明
 賃貸中の部屋に立ち入れないことについては合理性があります。しかし、現地訪問を断る理由は何かということです。

 購入を検討している方が現地を訪問したことにより購入を断念する理由はいくつかあります。最寄り駅から物件までの道が急峻で坂道が多い、前面道路の幅員が狭いにもかかわらず大型車両の通行量が多いことから通行の際に危険を感じる、建物の外壁に大きなクラックが入っている、近隣に葬祭場などの嫌悪施設がある、近くの工場が発する騒音が酷い等です。

 以上のような「欠点」がある場合は、欠点があることが考慮された価格で販売されていなければなりません。しかし、欠点があるにもかかわらず売主が値下げに応じず、仲介する不動産会社が欠点を隠して販売するように依頼され、不動産会社が断り切れなかった際に「現地訪問や内見は不要です。」等の戯れ言を言うわけです。

 このような収益用不動産は購入するべきではありません。

2.賃貸中のお部屋の内見はできないが、空室がある場合は内見しておくことをお勧め
 どの物件でも賃貸中のお部屋に対する内見は出来ませんが、空室がある場合はそのお部屋を内見しておくべきです。室内設備のグレードおよび状態、コンセントの数、陽当たりの程度、浴槽の大きさ、お部屋の使い勝手の良さなどを把握することが出来ます。

3.全室が満室でも、共用部は内見の価値あり
 玄関ホール、オートロック、エレベーター、廊下、階段は予め見ておくことをお勧めします。オートロックやエレベーターに故障の疑いがある物件は、購入を控えることが賢明です。玄関ホールや階段が異様に汚れている物件は、管理体制が杜撰であることを示しています。

 共用部の内見を断られた場合、その収益用不動産の購入は控えることをお勧めします。

4.レントロールおよび賃貸借契約の閲覧は重要
 契約者氏名、年齢、契約日、契約期間、家賃および共益費、勤務先等の情報は、物件購入の可否を判断するのに必要な資料です。これを参照出来ないと、物件の利回りを算出できません。

 ところが、レントロールの閲覧を求めると「作成していません」とか「閲覧はできません」などと言う不動産会社があります。このような場合、物件資料に表面利回りとして公開されている数値も怪しいと言えますし、多くの空室があるのに「満室」として売り出されていることがあります。

 このような物件を購入すると、想定していた金額の家賃を得ることをできず、事業用ローンの返済が出来ずに経営破綻する恐れがあります。

 「レントロールは非公開です」等と言われたら、その不動産会社を利用するべきではありませんし、当該物件の購入を見送ることが賢明です。

 賃貸借契約書についても閲覧が必要です。レントロールに記載されている賃料と異なる金額が賃貸借契約書に記載されていることがあります。とくに、現在はコロナ禍が完全には沈静化されていないことから売主が家賃などの減額を認めていることがあり、このことがレントロールに反映されていないことがあります。