住宅売却は居住中、空き家のいずれで行うべきか

 現在居住している住宅を売却したいというお客様(住宅の所有者)から質問を受けるのが、居住中のままで販売活動を行ってもらうのが良いか、それとも空き家にしてからの方が良いかという質問です。

 賃貸物件の場合、東京都区内では賃貸借契約が有効に成立しており賃借人が入居している状態で内見を行うことはありません。しかし、不動産売買に際しては所有者が居住している状態で内見を行うことがあります。                      

 住宅を売却する場合、販売活動は所有者居住中または空き家のいずれが良いかについて検討します。

1.所有者が居住中の場合、内見希望日時の調整が困難

 空き家であれば、所有者の都合を考慮することなくお客様が希望する日時に内見を行えます。しかし、所有者が居住中である場合は建物内部に所有者の私物があることから、私物の紛失を防止するために所有者の都合が良い日時に合わせて内見を行います。

 売主が勤め人等であり、休みをなかなか取れない場合は内見がかなり先になることがあります。すると、購入希望者において二番目の候補となる物件がある場合は、その物件を先に購入してしまうことがあります。 

2.現況居住中の物件は、「決済後も退去しないかもしれない」という不安を与える

 購入対象の物件が居住中の場合、「所有者は決済後に退去してくれるのか」という一抹の不安を購入希望者に与えます。売主が、決済後も明け渡し猶予期間の設定を要求する物件がありますが、このような物件では購入を検討している方が購入をためらうことがよくあります。不動産会社が「指定期日には必ず退去させます」と言っても、受け入れない方が多いです。

 物件の購入代金を支払い、決済して所有権移転登記を済ませ、売主が希望した明渡猶予期間を過ぎたにもかかわらず、引っ越し先が見つからない等の理由により退去してくれないというトラブルは、件数は少ないものの現実に発生しています。

3.居住中の状態で内見した物件は、後で隠れた問題点が見つかることが多く厄介

 居住中の状態で内見を行うと、内見の時点では購入希望者に認識されなかった瑕疵が見つかることがあります。具体的には家具の裏側に当たる部分の壁材が腐食していたとか、家具が置かれていた箇所の床板に凹みや変色が見つかる、照明器具を取り付けても点灯しない(電気配線、スイッチなどの故障)などのトラブルです。

 通常、居住中の状態で内見が実施される物件は個人所有の物件であることが多いので、売買契約書の特約に契約不適合責任免責の特約が設けられることが多いです。このため、補修や修理を行う費用は買主負担になりますが、費用が高額になると買主は良い気分にはなれないでしょう。

4.現況居住中の物件では、購入希望者の内見後に売主の私物が紛失するトラブルが発生することがまれにある

 現況居住中の物件における内見を実施する際は、私物の紛失を防止するために現所有者の立ち会いを求めるのですが、それでも「私物がなくなった」というクレームが発生し、不動産会社が対応に苦慮することがあります。

 売主の勘違いであることが多いですが、たまに「財布がなくなった」などの重大なトラブルに遭遇します。「盗まれた」と思って警察に通報しても、明確な証拠がなければ警察が動かないことがよくあります。

 多くの場合に紛失した私物を取り戻すことは困難であり、泣き寝入りするしかありません。

●結論

 売主居住中の物件は、早期に売却出来ないことがよくあります。また、上述した様々なトラブルが発生することがあります。

 「早い内から賃貸物件に引っ越しをすると家賃がもったいない」と言われることがあります。しかし、あくまでも筆者の個人的な見解になりますが、所有者が居住している状態での販売活動を不動産会社に依頼することはお勧めしません。