賃貸物件の借主が鍵を紛失し、または盗まれた場合(オーナー様向け)

 借主が鍵を紛失し、または鍵の入ったカバン等を盗まれたことからオーナー様または管理会社に届け出た際に、オーナー様はどのように対応すれば良いかについて説明します。 

 賃貸物件の管理を管理会社に委託している物件では誤った対応をされることは少ないと思います。しかし、オーナー様が自主管理している物件では無意識に危険な対応をしがちなので注意が必要です。

オーナー様が所持している合鍵、または複製した鍵を借主に渡すことは危険

 オーナー様が所持している合鍵を借主に渡して済ませることは危険です。借主が鍵の交換代を惜しみ、「合鍵を貸して欲しい」と要望されても貸さないことをお勧めします。貸室の解錠を求められた場合は面倒でもオーナー様が同行して解錠し、合鍵を渡さないことをお勧めします。合鍵を渡すと、返還に応じないことがよくあるからです。

 オーナー様が所持している合鍵の複製をオーナー様が作成し、借主に渡すことがありますが、これもお勧めできません。筆者の会社にオーナー様が訪れ、「借主が部屋の鍵をなくしたので自分が持っている鍵の合鍵を作成したい。」とか「ディンプルキーなので鍵メーカーしか合鍵を作成できないと言われた。それでは間に合わないので、合鍵をその場で作成してくれる業者を紹介して欲しい。」と依頼されることがありますが、危険な行為であることを説明させていただいています。

補足説明:防犯性能を重視しているマンション等では不正な解錠をしにくいディンプルキーを採用しているところがあります。ディンプルキーを複製する際は、メーカーに作製を依頼する必要があるものがあります。製作期間はメーカーにより異なりますが、約2週間~1か月強になることが多いです。

 鍵の紛失または盗難が発生した際は、錠前を丸ごと交換する必要があります。住所を示す何らかの書類と鍵とを一緒に紛失した、または盗まれた場合は特に危険であり、賊が侵入する恐れが高くなります。

 万が一、オーナー様が貸室の錠前を交換しなかったことが原因で賊が侵入し、何らかの被害が生じた場合はオーナー様が借主から損害賠償を請求される恐れがあります。

 錠前の交換費用を支出したくない借主において良かれと思って行動したことが仇になることがあるので、合鍵または合鍵から複製した鍵を渡すことで済ませるのではなく、新しい錠前に丸ごと交換することをお勧めします。 

防犯性能が低くても構わないので、錠前を早めに交換する

 取り急ぎ、防犯性能がやや低い錠前であっても構わないので新品の錠前に交換することをお勧めします。 

 防犯性能が低くても新品の錠前に交換しておけば、不幸にも賊が侵入して被害が発生したことからオーナーに対する損害賠償請求訴訟が提起された場合でも、裁判所は「オーナーは賃貸借契約を誠実に履行している」と判断してくれることが多いです。

 借主の部屋に賊が侵入し、何らかの被害が発生した場合でも錠前を交換しておくことにより、ほとんどの場合にオーナー様は免責されると思われます。

防犯性能が高いディンプルキーを採用した錠前への交換には日数を要する

 ディンプルキーを使用した錠前に交換する場合、納期に数日~約2週間を要することが多いです。交換するまでの期間における対応が問題になりますが、使用するのが数日間であっても容易に入手できる新しい錠前に交換しておくことをお勧めします。錠前の交換を怠ったことから賊が侵入し、被害が発生したら目も当てられません。

 臨時に使用する錠前は、一般の鍵店で鍵の複製を容易に作製できる防犯性能がやや低い錠前でも差し支えありません。ほとんどの場合に鍵店は即時に対応しますし、交換費用は1~2万円程度で済むことが大半です。

錠前の交換費用

 紛失の場合は借主負担とすることが通常です。盗難の場合は犯人に請求できますが、仮に犯人が逮捕されても無一文同然であることが多く、請求しても支払ってもらえないことが大半です。結局のところ、借主が負担することになります。

 前述した、臨時に使用する錠前の交換費用が発生した場合、費用を誰が負担するかはオーナー様と借主とが相談して決めることになります。通常は、借主の負担にすることが多いと考えられます。