賃貸物件の借主から「錠前を交換したい」と要望された場合の対応

新しい借主が入居する際は錠前を新品に交換し、新しいカギを渡すべき

 賃貸住宅に新しい入居者が入居する際における玄関扉の錠前については
 1.新品の錠前に交換する 
 2.他室で使用していた錠前を流用する 
 3.錠前の交換をしない

 のいずれかになります。

 入居者から「ガキの交換費用を負担したくない」と言われると、オーナー様の中には上記の2または3の対応をされる方がいらっしゃいます。しかし、これらの対応は防犯上大きな問題があるのでお勧めしません。 

 特に3(錠前の交換をしない)の対応をすると、前の入居者が隠し持っていたスペアキー等を使用し、新しい入居者の入居後に窃盗や強盗を行うことがあります。

 2の「他室で使用していた錠前を流用する」もお勧めしません。借主は薄汚れた鍵を渡されるので、過去に他室で使用していた鍵であることがすぐにわかります。防犯上の不安を感じる上に、オーナー様に対する心証が極めて悪くなります。

 それに前の入居者にも同じ対応をしていた場合、前の入居者は「この建物では錠前を使い回している」と認識しています。他室の錠前に片っ端から鍵を差し込み、窃盗行為が行う輩が現れる恐れがあります。

 さらに設置されてから何年か経過した錠前は内部の部品が劣化していることが多く、古い錠前はピッキングに対する防犯性能が元々低いので防犯上の問題があります。

  交換費用を借主、貸主のどちらが支出するにせよ、新しい借主が入居する際は錠前を新品に交換し、借主に新しい鍵を渡すべきです。

借主が「錠前を交換したい」と要望した場合

 本題です。借主が「錠前を交換したい。費用は借主負担で構わない。」と要望した際に、オーナー様はどのように対応するべきかについて考えます。

 この対応は、借主が錠前の交換を希望する理由によります。

「防犯性能がより優れている錠前にしたい」という理由の場合 

 合鍵をオーナー様または管理会社に預けることを条件として承諾して構わないと思います。警備会社に機械警備を依頼している場合は、警備会社に預ける合鍵も必要になること、および合鍵の作成費用は借主負担になることを伝えることで構わないと思います。

「オーナー様といえども勝手に入室されたら困るから」という理由の場合 

 原則としてお断りして構わないと考えます。 
 合鍵をオーナー様や管理会社が保管して非常時に使用することがあること、およびその理由は不動産会社が行う重要事項説明の際に借主に説明するのが通常です。 

 しかし、説明が不十分であった等の理由により、借主の中にはオーナー様や管理会社が鍵を預かる理由を理解していない方がいらっしゃいます。この場合は鍵を預かる理由を詳しく説明する必要があります。

 階下の入居者から「天井から水漏れがしている」との連絡があった場合、オーナー様または管理会社は室内の水道設備に異常が生じたことを疑います。借主が在室していない場合は解錠して入室し、対応する必要がありますが、その際には合鍵が必要です。

 また、同じ建物に入居している他の方から「最近、姿を見ていない」との情報が入り、家賃が滞納されており、長期間不在にしていると思われる場合は警察官立ち会いの上で合鍵を用いて入室し、室内を確認する必要があります。

 いずれにせよ、「オーナーおよび管理会社が合鍵を預かることは賃貸物件の維持、および管理のために必要」であること、および「非常時を除き、オーナーおよび管理会社は借主の許可がなければ入室しない」ことを説明します。

「鍵を持参するのが面倒なので、暗証番号式の錠前に交換したい」という理由の場合

 借主が民泊に転用することを考えていることがあります。 

 暗証番号式の玄関錠は民泊で用いられます。民泊として利用されると不特定多数が入室し、宿泊者が夜中に騒ぐ、ゴミを廊下に置いていく等のトラブルを起こすことがよくあります。

 民泊として利用されない場合でも、借主は暗証番号を他人に教えてしまいがちです。部屋の鍵を他人に渡すことには抵抗があるものの、部屋の暗証番号を教えることには抵抗感がない方が多いです。

 以上の理由により、民泊としての利用を許可しない物件では交換をお断りして構わないと考えます。