専属専任媒介、専任媒介、一般媒介ではない「媒介」とは何か

 不動産に関する解説本や宅地建物取引士の資格試験に関する本を参照すると、媒介契約には専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の三つがあることが記載されています。これらについては宅地建物取引業法が規定しており、宅地建物取引士はもちろん、不動産会社に勤めたことがある方であればよく知られている内容です。

 最近、これらの三つの媒介契約のいずれにも該当しないスタイルの取引態様が増えています。それが単なる「媒介」という取引態様です。主に以下の二つの場合に用いられます。

1.レインズやポータルサイトへの公開を避けたい場合に利用される

 不動産の売主が不動産会社である場合に良く利用されます。通常、不動産の売主は専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約のいずれかを不動産会社と締結して売却に向けた活動をしてもらうのですが、売主が不動産会社である場合にはどこの不動産会社とも媒介契約を一切締結せず、取引態様を単に「媒介」として他の不動産会社に客付けを依頼することが増えています。

 その理由は、別の不動産会社と専属専任媒介契約または専任媒介契約を締結すると、宅地建物取引業法の定めによりレインズ(不動産会社及び金融機関のみに閲覧権限が与えられているポータルサイト)に必ず掲載しなければならなくなるからです。

 物件情報がレインズに掲載されると、他の不動産会社やその不動産会社のお客様に広く知られることになります。

 また、売主である不動産会社が別の不動産会社と一般媒介契約を締結すると、実務上は売却の方法を一般媒介契約を締結した不動産会社に委任したことになります。

 宅地建物取引業法は、一般媒介契約を締結されている物件に対するレインズへの掲載義務を規定していませんが、ほぼ間違いなくポータルサイトに物件情報が掲載されます。

 専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約のいずれでも一旦締結すると土曜日又は休日になるとタブレット端末や物件情報を記載した紙を持っている方が物件の周囲をウロウロ歩くことになります。

 物件の近くに住む住民に悪影響を与えず、内緒で売却する販売戦略を執りたい場合、専属専任媒介契約および専任媒介契約、一般媒介契約は販売戦略を遂行する上での妨げになります。

 このため、売主である不動産会社が懇意にしている限られた不動産会社のみに物件情報を流し、「媒介」という取引態様で販売活動をしてもらうことがあります。

 販売活動を依頼する不動産会社が少なくて大丈夫かと思われがちですが、売主である不動産会社が自ら販売活動を行う必要がなくなるので、営業人員および広告費の大幅削減が可能になるという大きなメリットを受けられます。

2.レインズで知った物件情報をお客様に紹介する場合

 客付けを行う不動産会社において、レインズに掲載されている物件がお客様の希望に合致していることからお客様に紹介したい場合があります。

 売主である不動産会社による情報、専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約のいずれかを締結している不動産会社からの情報のいずれであっても、客付け会社には物件情報を提供している不動産会社とのつながりがないことがあります。

 このような場合、取引態様の欄を「媒介」と記載した物件情報シートを渡します。「媒介」という取引態様は、レインズで知った物件情報をお客様に紹介する場合にも用いられます。