心理的瑕疵があることを説明しないように頼まれても...

それ程多くはないのですが、賃貸アパートや賃貸マンションのオーナーから、心理的瑕疵があることを隠して入居者を募集できないかとの問い合わせがあります。

「不審死が発生したものの、事故物件を掲載するサイトにはまだ登録されていない。心理的瑕疵が無いことにして貸したい。『告知事項あり』として、事故物件であることを正直に募集図面に掲載すると入居希望者がなかなか現れないし、家賃を値下げしなければならない。」等の内容が多いです。

自分に非があるわけではないのに入居希望者が減り、家賃の値下げを強いられるのではたまらないというオーナーの気持ちは、ある程度理解できます。

心理的瑕疵の有無は、入居希望者が入居を申し込むか否かの判断をする重要な項目です。宅地建物取引業法第47条に従うと、心理的瑕疵がある場合にはその内容を入居希望者に伝えなければなりません。

オーナーから依頼されたとしても、事故物件であることを知りながらそれを隠して入居者を募集し、賃貸借契約を成立させる行為は違法行為です。賃借人が事実を知った場合は、仲介した不動産会社が損害賠償請求されることがありますし、都道府県庁に届け出られた場合には事務停止処分(いわゆる営業停止)になることがあります。

事故物件のオーナーに対し「告知事項あり」として募集しなければならない旨を伝えると、「『告知事項あり』にしなければいけないというなら、他の不動産会社に依頼する。」と言われるオーナーがたまにいらっしゃいます。

このようなオーナーは「心霊現象などあるはずが無い」、「幽霊なんか存在しない」、「迷信だ」、「宅建業法が間違っている」、「オバケなんかいるわけがないのに迷惑だ」等と主張します。

私の周囲で発生した事例を紹介します。「幽霊など世の中に存在するわけがない」と豪語する、事故物件のオーナーが「俺が試しに1週間程度生活してみる。何も出ないはずだ。」と言って布団と着替えを持ちこみ、お試し入居しました。

ところが1晩過ごしただけで精神錯乱状態に陥り、意思の疎通が全く出来なくなりました。家族が翌朝に電話をかけても全く繋がらず、勤務先にも現れないとのことで家族が訪問し、錯乱しているところを発見しました。そのまま精神病院に入院することになり、何ヶ月も入院しました。守秘義務があるので、これ以上詳しく書くことは出来ません。

何かが起きた可能性は否定できません。何らかの病気が偶然発症したとも考えられますが、真相は不明です。

科学的な検証は行われていませんが、「感じる」とか「見えることがある」等と言われる方は他にもいらっしゃいます。一概に「迷信」であるとして、事故物件であっても告知は不要とする内容の法改正を行うことは困難ではないかと思います。

事故物件であることを隠して賃借人を募集した場合、後でトラブルに巻き込まれることがあります。いわゆる超常現象が発生しなくても、賃借人が事故物件であるという事実を知った場合には訴訟沙汰になることがあります。

事故物件に関する情報をまとめたサイト(「大島てる」等)がありますが、全ての事故物件が掲載されているわけではありません。

法に従うと事故物件を紹介する際には心理的瑕疵があることを告知しなければなりません。

私の会社では、オーナーから懇願された場合でも、明らかに心理的瑕疵があると判断される場合には告知が必須であることを説明し、納得していただいています。

なお、オーナー様が心理的瑕疵があるとお考えの場合でも、事故物件ではないと判断できることがあります。このあたりの判断は難しいのですが、状況を丁寧にお尋ねした上で判断させていただいています。