このような登記がある不動産は、絶対に買ってはいけません

「友人や知人、親戚が不動産を安く売ると言っている。購入しても大丈夫か。」という相談を受けることがあります。よくあるのは以下のパターンです。

・「利回りが良い収益不動産(1棟ものの賃貸マンションなど)を安く購入したい。知っていたら紹介して欲しい。」と知人の不動産投資家に相談したところ、別の不動産投資家が所有する物件を紹介された。格安なので欲しいが、買っても心配ないか。

・「勤めている会社が地方に移転することになったので自宅を売りたい。あなたが買ってくれるなら安くする。引越しの前に決めて欲しい。」と言っている友人がいる。買っても大丈夫か。

売主は「物件の安さ」を強調し、急ぎの売却を希望していることが多いです。
しかし、どのような物件でも、購入前には土地および建物に関する不動産登記簿謄本を取り寄せ、確認する必要があります。友人や親戚が所有する不動産でも例外ではありません。

絶対に買ってはいけない、恐ろしい内容の登記があります。実際に、この登記が行われている物件に遭遇したことがあります。

以下の登記がある不動産は、絶対に買ってはいけません。

1.「処分禁止の仮処分」が登記されている物件

所有権の帰属先に関する争いが生じており、裁判上、帰属先がまだ確定していない不動産であると捉えて構いません。処分禁止の仮処分が登記される際には、登記簿に申立債権者の氏名が記載されます。この申し立て債権者は、処分禁止の仮処分を登記することにより、「この物件の所有権は自分にある。」と主張しているのです。

例えば、不動産の登記済権利証が盗まれ、偽造された印鑑証明書を利用して不動産の所有者名義が不正に変更された場合等、犯罪行為による名義変更をされた場合には、真の所有者は裁判を提起して争います。この場合、裁判所は判決を下す前に「処分禁止の仮処分」を登記することがあります。

訴えの内容は「所有権登記を自分に戻せ」という内容なので、金銭で解決することが出来ない場合が多いです。

このような不動産を購入し、代金を支払っても、法務局は所有権移転登記申請を却下します。不動産の所有権を自分に移すことは出来ません。

代金を支払った後に売主が行方不明になってしまうと、支払った代金を回収できないことが多いです。残念ながら、「処分禁止の仮処分」が登記されている不動産ではこのような事態が頻発しています。

2.「所有権移転仮登記」、「所有権移転請求権仮登記」、「条件付所有権移転仮登記」が登記されている物件

既に売却先が決まっている不動産であり、購入して代金を支払っても所有者になれない不動産であるとお考えください。

不動産競売にかけられている物件でも以下の登記がなされていることがあります。このような物件で入札に成功して不動産の所有権を自分に一旦移転させても、裁判所の確定判決により仮登記が本登記になることがあります。この場合、入札に成功して裁判所に代金を支払った場合でも代金を回収する方法はありません。

2-1.所有権移転仮登記
売買契約を既に済ませ、代金の支払い(決済)も済ませているものの、所有権移転登記に必要な書類が揃わない等の理由において所有権移転登記をまだ行えない場合に、権利を保全するためにこの仮登記をすることがあります。

2-2.所有権移転請求権仮登記
売買契約の締結に監督官庁の許可が必要な場合にこの登記が行われます。売買を行う当事者間では既に合意しているものの、監督官庁(農地の場合は農業委員会)による所有権移転許可を得られないために代金の支払を済ませていない等の場合に、権利を保全するためにこの登記が行われます。

2-3.条件付所有権移転仮登記
監督官庁などの第三者の許可が無ければ売買を行えない場合において、許可が得られるかが不明であることがあります。許可が得られることを条件として売買を行うことについて、当事者間で合意している場合にこの仮登記が行われます。

※注意が必要な登記は他にもあります。

購入検討中の不動産に登記されている内容に問題点があるか否かがわからない場合は、売買を生業としている不動産会社への相談をお勧めします。