賃貸物件の差別化を図る方法について

ご承知の通り、賃貸マンションや賃貸アパートの建築が相続税対策になるとの情報が広く伝わったことから、都心部、特にJR線各駅および私鉄線の特急・急行停車駅近くでは賃貸物件が数多く建設されています。

コロナ禍であることから賃貸物件を探すために内見される方が激減しています。現在居住中の賃貸物件から他の物件へ転居したいと思っていても、余程の事情がなければ転居に踏み切らない方が増えています。

このため、都心では賃貸物件相互における競争が激化しています。賃貸物件のオーナー様の中には物件の差別化を図ることにより入居を促進して空室を無くし、家賃収入を増やしたいとお考えの方が多くいらっしゃることと思います。

本日の投稿は、このあたりを整理して書きます。なお、個々の賃貸物件における事情は様々であり、以下の差別化対応策が全ての賃貸物件に適用できるわけではありません。実際に差別化を行いたい場合は、地元の不動産会社への相談をお勧めします。

1.女性専用、または男性専用の賃貸物件にする

既存の居住者がいる場合には直ちに変えることが困難ですが、女性専用、または男性専用の物件に変えることが考えられます。

女性の方は、同じ建物内に居住する男性によるのぞき見行為やストーカー行為、各種犯罪に遭遇することを恐れています。このため、女性専用の賃貸物件は人気があります。

今後は男性専用の物件も増えると思われます。特に若い男性の場合、心理的には若い女性と同じとお考えいただいて構わないと思います。あまり報道されることはありませんが、若い男性に対するストーカー行為は増えています。酷い例になりますが、複数の女性に取り囲まれて拉致された事件が実際に発生しています。

特に危険行為に一回でも遭遇した、または遭遇しかけた方は、男女を問わず安全性を重視した物件をお探しになります。防犯仕様に優れているだけではなく、同じ建物に居住する他の住人の性別や属性も考慮した上で、入居の可否を判断されます。

リフォームをする場合、建物の内外を全て同じ色でまとめる必要はありません。女性専用の場合、外装や共有部の色遣いを淡い暖色系にし、男性用物件の場合は薄い寒色系の色にするとよいと思います。女性専用、男性専用を問わず、室内の壁クロスは白または薄いベージュ系の色にするのがお勧めです。

2.駐車場を確保する(公共交通機関を利用しにくい物件の場合)

駅からやや離れた賃貸物件であるのに、駐車できる車の台数が部屋の数より少ない物件があります。

駅から離れており、かつバスなどの公共交通機関も利用しにくい場合は、物件の近くに駐車場を用意することが有効です。空き地を探し、土地の所有者と相談の上で駐車場を確保することにより、入居率が改善することが多いです。

3.1階をバリアフリーにする

1階の物件は人気がありません。のぞき見や窃盗事犯に遭遇する確率が高いと思われているからです。リフォームによりエントランスおよび室内をバリアフリーにすれば、1階部分の入居率を改善できます。

さらに、1階の部屋についてはバルコニーの雨戸を防犯シャッターにし、窓ガラスやガラス扉を合わせガラスにする等の防犯仕様を施せば、入居希望者の評価は高くなります。

交通事故等の理由により足腰に障害がある方はバリアフリーの物件を探しています。エレベーターがない物件の場合は1階にしか設定できませんが、需要があります。探されている方は、老若男女を問いません。

なお、全ての賃貸物件において実施可能な施策ではないことをお断りしておきます。

4.クレジットカードを利用可能にする

賃料の振り込み方法として、月末に銀行振込を指定しているところが多いですが、クレジットカードによる支払が可能であれば、月末の銀行振込をしなくて済みます。さらにポイントがつくことから、クレジットカードの利用が可能な物件を探されるお客様は多いです。

賃料の徴収を代行する管理会社がクレジットカード会社と提携している場合はすぐに導入可能ですが、クレジットカードの手数料として賃料の5%前後を徴収され、差し引かれた金額がオーナー様の預金口座に入金します。

クレジットカード会社に支払う手数料については、賃料に上乗せされるのが通常です。このため、賃借人は相場より5%程度高い賃料を支払うことになります。

また、賃料が高めの物件である場合は、入居者のカード利用限度額が少ない場合に限度額オーバーになることがあり、これも問題になります。特に年末年始の帰省シーズンやお盆には旅行費用をカード支払にする方が多いため、限度額オーバーになることがよくあります。

この場合、管理会社がクレジットカード会社に請求しても請求を受け付けません。管理会社側では請求を受け付けない理由がわからない(請求拒否の理由確認は、カード名義の本人しか行えない)ので、対応に日時を要することがあります。結果として家賃の支払いが遅れることがあります。

賃借人におけるクレジットカードの利用限度額が多い場合を除き、賃料が高額な物件における賃料の支払方法としてクレジットカードを設定するのは控えることをお勧めします。

5.ペット飼育可の物件にする(床下の構造により、お勧めできない場合があります)

私の会社の事務所がある東京都目黒区の場合、ペットの飼育が可能な物件は、坪当たり賃料にして1,000円前後を高く設定できます。

ペット飼育可の物件はそれ程多くありません。ターゲットとなるお客様は、ペット飼育をしている方、およびこれから飼育しようとしている方になります。

差別化に繋がりますので賃料のアップに期待できます。

しかし、猫が飼育されると建物の内部を傷つける事が避けられません。壁クロスや床が汚れるので、退去時にはリフォームが必ず必要になります。また、動物の毛や排泄物の臭いに関する問題が、ある程度避けられません。

問題なのは、建物が木造である場合です。排泄物が漏れて床下の構造部に伝わった場合、リフォームやハウスクリーニングを行っても脱臭できないことがあります。床下の構造により、ペット飼育可にすることをお勧めできない場合があります。

また、同じ建物内に「ペット飼育不可」の条件で入居された方がいらっしゃる場合は、ペットを飼育されている方とのトラブルが発生しがちであり、退去に繋がることがあります。これもあまりお勧めできない理由です。