賃貸物件、転居先を知らせない退去者に要注意

 賃借人が賃貸物件を退去する際は、退去届を書面で提出してもらうのが通常です。ところが、転居先に関する情報を一切記載しない賃借人がたまにいます。

 転居先の住所欄が空欄である場合、退去時に注意が必要なので、本日はこれらについて書きます。

 退去される方に転居先を口頭で確認しても「告げる必要はない」と主張し、絶対に応じない方がいらっしゃいます。その理由は様々ですが、代表的なものは「後から請求される金額が発生すると困る」という理由と、「残置物の回収を求められると困る」というものです。

「後から請求される金額が発生すると困る」について

 このように考える方は「敷金から金銭を差し引かれたら困る」と考えています。そもそも敷金は未払い家賃が発生した場合に備え、これを担保するものとして徴収される預り金です。

 しかし、実務(主に関東)では借主が損傷させた箇所の修理代金の担保にも利用されています。退去が完了した際には損壊部分の修理代金(原状回復費用)を敷金から差し引いた金額を借主に返還することがよく行われています。

 借主が貸室を著しく損壊し、自覚している場合に「後から請求されても困る」という理由で転居先を明らかにしないわけです。このような方は「引越完了後、部屋の鍵を不動産会社(または管理会社)に持参して返すので、敷金の全額をその場で現金で受け取りたい」と希望することが多いです。

 対策としては引越の日時を確認し、オーナー様(または不動産会社・管理会社の担当者)がその日時に立ち会うことです。賃借人と共に室内を確認し、損傷箇所を入念にチェックする必要があります。損傷の程度が著しく、敷金では賄えないことが明らかな場合はその旨を告げ、転居先を必ずその場で聞き出し、請求することをお勧めします。

 また、部屋の鍵が返還された時点で直ちに敷金の全額を返還することはお勧めしません。室内を確認し、未払家賃と修理代金とを差し引いた金額を銀行振込等の方法により返還することをお勧めします。

「残置物の回収を求められると困る」について

 とんでもないものを貸室内に残置していることがあります。大型の家具、冷蔵庫、洗濯機が多いですが、犬や猫等のペットを置いていく方がいます。特にペットを置いて行かれると、前回の投稿に記載したとおり、大変なことになります。

 対策としては引越の日時を確認し、オーナー様(または不動産会社・管理会社の担当者)がその日時に立ち会い、残置物の状況を確認することです。

 前回の投稿に記載した内容の繰り返しになりますが、ペットを飼育する資金や時間的余裕がない方は周囲の方(オーナー様、不動産会社、管理会社、里親探しを行うNPO団体)に迷惑をかけるので飼育するべきではありません。

 ペットを貸室に置いていく行為はペットに対する虐待であり倫理上、大きな問題があります。そればかりか、周囲の方に負担(時間的負担および金銭的負担)を押しつける行為です。とても悪質であり、許容できません。