不動産を競売で購入する際は要注意(建築基準法、登記 その1)

最近、郊外の戸建住宅に対する需要があります。コロナ禍であることから、投資家は安く購入して賃貸住宅として貸すことを期待しますし、日常業務の大半をリモート環境で行える方は高額な都心の住宅やマンションを購入するのではなく、郊外にある中古戸建住宅の購入を検討しています。郊外の戸建住宅の場合、都心の戸建住宅よりも格安であることから、住宅ローンの借入金額を大きく抑えられると真剣に検討される方が増えているようです。

郊外の戸建住宅の購入方法として、裁判所が実施する競売をお考えの方が増えています。競売物件に入札する際には様々な注意点があります。物件の管理が行き届いていないとか、ほとんどの物件において内見が実施されない等の問題があります。詳しくは、以前の投稿に記載しましたが、土地の権利関係および登記内容にも格段の注意を要します。

通常の不動産売買では仲介を行う不動産会社の宅地建物取引士が確認し、売却の妨げになる問題点の有無を確認します。しかし、競売の場合は不動産会社のチェックが入らないので、入札者が調査する必要があります(競売物件の入札代行を行う不動産会社を利用する場合を除く)。

そもそも不動産競売が実施される目的は、債務の弁済が滞った際に担保権(抵当権、根抵当権等)が設定されている不動産を競りで売却することにより落札者(買受人)が支払った代金を債権者に配分し、余剰が生じた場合は債務者に渡すことにあります。

物件を落札して購入した者(買受人)が、その不動産を利用できない事態が発生しても、裁判所は基本的に関わらないというスタンスであるとしか思えない物件があります。

1.建築基準法上の問題がある土地
以前、旗竿地における敷地と竿の部分の所有者が異なり、しかも竿部分の幅員が1.6メートルしかない土地が更地の状態で競売にかけられたことがあります。宅地建物取引士であれば、このような土地は建築不可であり、建物を建てられないことがすぐにわかります。

しかし、裁判所が作成した現況調査報告書には竿部分の幅員が1.6メートルであること、および敷地と竿の部分の所有者が異なることが記載されているものの、「建築不可であり、建物を建てられない」との記載はありません。このため、入札して購入した方がいらっしゃいます。当然、建物を建築できると信じて購入したわけです。

建物を建てられない土地を売却したくても購入する方は誰もいませんし、高額な固定資産税を毎年支払わなければなりません。この方は巨額の財産を一瞬にして失ったと言えます。不動産を競売により購入する際のリスクはとてつもなく大きくなることがあります。

以上は、都市計画区域にある土地に適用される内容です。非線引き区域などでは必ずしも適用されませんが、条例による規制が適用される場合があります。

2.土地の権利として「所有権移転仮登記」、「処分禁止の仮処分」等が登記簿上に記載されている土地
この登記は土地所有権の移転先が既に決定しており、競売の落札者よりも優先して所有権移転することを示しています。

このような仮登記が存在しないものとして不動産鑑定士が評価し、売却基準価格が定められていることがあります。競売が実施されると、土地の所有権名義は落札者(買受人)に一旦移転します。しかし、先の所有権移転仮登記を受けている者が仮登記を本登記にする旨を裁判所に申し出た場合は、この仮登記を受けている者が所有権を取得し、競売の落札者は代金を支払っているにもかかわらず、所有権を失います。

この場合、怖いのは所有権を失った場合でも、競売の際に支払った物件購入代金の返還を一切受けられないことです。土地権利に関する登記で注意しなければならないものは他にもあります。

以前の投稿で、登記で注意しなければならないものをまとめています。こちらを参照願います。

※明日の投稿に続きます。