住宅ローン返済中の区分マンションにおける管理費等を滞納した場合

昨日の投稿では、区分所有者が管理費および修繕積立金を長期間滞納した場合において、支払不能の場合は任意売却または競売により回収することを書きました。

この方法が適用されるのは、区分マンションの所有者が当該物件の購入に際し現金一括で購入したか、住宅ローンの返済を完済している場合になります。

問題なのは、この区分マンションの購入に際し住宅ローンを返済している最中に管理費および修繕積立金の滞納が発生し、それが長期間継続された場合です。

住宅ローンを利用して区分マンションを購入した場合、区分所有権に対し、抵当権または根抵当権が設定されています。この場合、不動産を何らかの方法(任意売却または競売)で処分した際に、優先的に弁済を受けられるのは抵当権者(金融機関、サービサー)になります。

管理組合は、全ての抵当権者が弁済を受けた後に残額がある場合でなければ弁済を受けられません。残額があると想定される場合に限り「仮差押え」が可能ですが、それ以上に行えることはありません。管理費・修繕積立金の請求権は貸金返還請求権と同じ扱いになるため、上述した扱いになります。

住宅ローンはしっかり返済するものの、管理費等の支払には応じない場合
マンションの区分所有者が住宅ローンの返済はしっかり行うものの、管理費および修繕積立金の支払いを拒絶することがあります。このような場合、管理組合としては為す術がないことがあります。

管理費や修繕積立金が滞納されていても、抵当権者である金融機関やサービサーには関係ありません。住宅ローンの返済が滞った場合でなければ抵当権者が動くことはありません。

管理費・修繕積立金・遅延損害金が膨れ上がったことから管理組合が所有者に督促しても支払に応じず、抵当権者も動かず、仮差押えの登記も出来ない物件があります。

このような場合は回収の手立てがありません。滞納額と遅延損害金の合計が100万円を超える区分マンションがたまにありますが、回収の方法がないことが理由であることがあります。

昨日の投稿では管理組合の事なかれ主義が原因の一つであると書きましたが、住宅ローンを利用して購入したことから抵当権または根抵当権が設定されている物件では直ちに回収する法的手段方法がないことも、原因の一つです。

回収の方法
以下のいずれかになると考えられます。
1.区分所有権を売却し、全抵当権者が弁済を受けた後に残額がありそうな場合は「仮差押え」を行う。
※オーバーローンの物件が多く、実務上は困難なことが多い。「仮差押え」を行う要件は厳しい。

2.住宅ローンの完済を待ち、その後に「差押え」の手続きを行う。

3.住宅ローンの返済が滞り、金融機関またはサービサーの手により任意売却又は競売が実施された場合は、この物件を購入した新しい所有者に請求する。
※区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)により、新しい所有者に請求できる。