困った相談(その32、実家が空家になったので貸したい)

 両親が高齢者施設に入所した、または他界した等の理由により実家が空家になったので、「実家を賃貸住宅として貸したい」との相談があります。これは簡単なようで、意外に難しいことが多いです。

1.土地の権利が借地権である場合は地主の許可が必要

 通常、借地権を設定する場合は借りた土地を自己居住のみに利用することを前提としています。ところが賃貸住宅として第三者に貸す行為は自己居住ではないことから、大半の地主は賃貸住宅へそのまま転用することを許可しません。

 地主が良心的な方である場合は、承諾料の支払いと地代の値上げを条件として転用を認めてくれることがあります。 

 しかし、地主により土地の賃貸借契約(借地権契約)を一旦合意解約し、事業用として利用する内容の土地賃貸借契約を新たに締結するように求められることがあります。当然、地代および更新料を大幅に値上げすることを併せて了解することが求められます。この場合、都心の戸建住宅では地主に支払う費用が数百万円~2千万円以上になることが多いです。 

 後述しますがこの出費だけでは済まず、大規模なリフォーム費用も必要になることが多いので、土地の権利が借地権である場合は賃貸住宅として貸すことを断念される方が多いです。 

2.大規模なリフォームが必要で、多額の費用が発生することが多い

 築古の木造住宅では床板に凹みがある、屋根瓦の一部がひび割れして雨漏りがある、建物内における扉および雨戸の開閉がしにくい、システムキッチンが壊れている、天井および壁クロスの汚れが酷い、窓ガラスの一部にひびが入っている。玄関扉を施錠しにくい、エアコンや給湯器が故障している、階段の手すりが破損している等の問題があることが多いです。

 建物を「自宅」として利用する場合は修理費用を考え、問題が些細であれば気にせずに利用し続ける方が多いです。このため、多くの故障箇所が放置されていることが多いです。

 しかし、賃貸住宅として第三者に貸し出す場合は全ての不具合が解消され、かつハウスクリーニングが行われていることが必要です。都心の戸建住宅について相談を受けたので賃貸住宅として貸せる状態にリフォームする費用を見積もったところ、最低でも400万円近くを要することが判明したことがあります。この戸建住宅を貸した場合の想定賃料は月17万円なので、約2年分の賃料相当額がリフォーム代に消えることになります。

 現況で第三者に貸せないかを尋ねられましたが「東京の都区部では、修理やリフォームをしていない家を借りる方は誰もいない」と説明させていただきました。

 相談者の意向を確認したところ、「急に言われても400万円は大金であり用意できないので、貸さずにこのままにしておく」とのことでした。

 「実家を賃貸住宅として貸したい」 と考えても、難しいことが多いのが実情です。