賃貸管理について-管理会社が行う内容と管理費用

2022年3月15日

 賃貸マンション、賃貸アパートのオーナー様において、自身が所有する賃貸物件の管理をどのように行うべきか、何を依頼するべきかは大きな問題です。

 一口に「管理」と言っても、その内容は多岐にわたります。どこまで依頼するかにより管理の費用は大きく異なります。賃貸管理の内容は多岐にわたりますが、主な内容は以下の通りです。

賃貸管理において管理会社が行う内容

・入居者が支払う家賃および共益費の出納および確認
・家賃および共益費の支払いを失念した入居者に対する連絡
・共用部の定期的な清掃
・建物全体および共用部の定期的な見回り
・入居者からの設備故障および不具合に関するクレームの受付とオーナー様に対する連絡
・建物および共用部における異常や不具合を発見した場合における対処方法の検討とオーナー様への報告
・故障および不具合が生じた際における修理業者への作業発注および立ち会い
・エレベーター、オートロックの定期点検と立ち会い
・大規模修繕の内容検討、見積もり依頼、工事業者への発注、立ち会い
・他の入居者に対するクレーム(騒音、粗暴な行動など)の受付と対応
・入居者に対する説明(設備およびルールの説明、家賃の支払方法、ゴミ出し等)
・賃貸借契約の更新に関する連絡と賃貸借契約書の作成(管理会社が不動産会社である場合)
・消防設備・電気設備等の定期点検、排水管洗浄の業者依頼、および立ち会い
・入居者の退去受付け、および退去時における立ち会い
・退去後の空室に対するリフォーム内容の提案と 見積もり依頼、工事業者への発注
・新たな入居者の募集と、不動産会社に対する必要データの提供(管理会社が不動産会社ではない場合)
・管理の内容に関する報告書(月次および年次)の作成とオーナー様に対する説明
・家賃および共益費を滞納している入居者に対する督促、および退去に向けた交渉
 (賃貸保証会社が保証契約を締結していない入居者の場合)
・管理人を常駐させ、入居者に様々なサービス(コンシェルジェサービス)を提供する

 上記の他にもありますが、ここでは割愛します。主な内容だけでもかなり多くの項目があります。

 オーナー様の中には全て自分で行い、管理を外部に委託しない方がいらっしゃいます。しかし、住戸数が多い物件の場合、オーナー様が全て対応することは極めて困難です。

 列挙した項目の全てを管理会社に依頼した場合の管理費用は、私の会社がある東京都目黒区では賃料収入の6~10%(常駐する管理人および清掃員の日当は別途請求)です。これでは高額であるということで、オーナー様の多くは管理会社に依頼する項目を絞り、管理費用を減らしています。

 最も多いのは、 以下の7項目を依頼するパターンです。 このパターンであれば賃料収入の4~6%程度で請け負うところが多いです。なお、24時間対応サービスを依頼する場合は、管理費用はさらに高額になります。

注意:管理費用の相場は、エリアおよび管理会社によりかなり異なります。

・入居者が支払う家賃および共益費の出納および確認
・家賃および共益費の支払いを失念した入居者に対する連絡
・共用部の定期的な清掃(清掃員の日当は、管理費用とは別に請求)
・建物全体および共用部の定期的な見回り

・入居者からの設備故障および不具合に関するクレームの受付とオーナー様に対する連絡
・建物および共用部における異常や不具合を発見した場合における対処方法の検討とオーナー様への報告

・故障および不具合が生じた際における修理業者への作業発注および立ち会い

 次に多いのは、以下の3項目のみを依頼するパターンです。 私の会社がある東京都目黒区では、このパターンであれば賃料収入の2.5~4%程度で請け負うところが多いです。 主な内容は家賃・共益費の出納管理なので、厳密な意味での「賃貸管理」とは異なる感があります。

・入居者が支払う家賃および共益費の出納および確認
・家賃および共益費の支払いを失念した入居者に対する連絡

・入居者からの設備故障および不具合に関するクレームの受付とオーナー様に対する連絡

 このパターンを選択する場合、設備の不具合に関するクレームに対する対応はオーナー様が直接行います。つまり、修理を行うか否かの決定、修理を行う際における業者の選択、修理内容の決定と見積もり、立ち会い、費用の支払いは管理会社ではなくオーナー様が行います。

 オーナー様が修理業者を選択することにより、修理に関する管理会社のマージンがなくなるのでオーナー様にとっては安上がりです。しかし、最適な修理を行える業者の選択を誤ると逆に高く付くことがあります。

 なお、不動産会社に管理を依頼する場合は、空室が発生した際における次の入居者募集をこの不動産会社が「専任媒介」または「専属専任媒介」で行うことを認めることにより、管理費用の大幅な値下げに応じてくれることが多いです。

 サブリース業者に委託し、管理業務の全てを丸投げする方法もありますが、支払われる賃料は満室時における家賃収入の約8割になります。空室時においても家賃収入があるとはいえ、管理費用として賃料収入の約2割を支払うことになります。管理費用として考えた場合、かなり高額です。

 また、サブリース業者の対応に気に入らない点があっても借地借家法の定めにより、サブリース契約をオーナー様側から解約することは容易ではありません。

 さらに、将来においてこの賃貸物件を売却する際における査定価格は、本来の価値より2割程度安くなります。サブリース契約がある物件の場合、満室になっても賃料収入は2割程度低くなりますので、この点が査定価格に反映されます。

 本業がとても忙しい、賃貸物件の所在地よりかなり遠い場所に居住している等の事情がない限り、管理を丸投げすることを目的としたサブリース契約の締結は賃料収入の低下を招き、さらに売却時における査定価格の大幅減少を招くのであまりお勧めしません。