賃貸物件にフリーレント期間を設けることの是非(オーナー様向け)

 所有している収益用不動産(賃貸アパート、賃貸マンション)を早く満室にしたいことからフリーレント期間を設けるべきかについて相談を受けることがあります。

 入居する賃貸物件をお探しのお客様の中には、フリーレント期間が設けられている物件に限定して探される方がいらっしゃいます。家賃の1~3か月程度が無料になるからです。

 しかし、オーナー様の視点から考えると、早く満室にしたいという理由によりむやみにフリーレントを設定することは考え物です。

フリーレント期間中の入居者が入居直後に退去した場合、対応が困難
 入居開始から2か月をフリーレント期間に設定した物件において、フリーレント期間中にもかかわらず入居者が1か月程度で退去したいと申し出たとします。

 このような場合、賃貸借契約書における特約条項に「賃借人の都合により1年以内に解約した場合は家賃の2か月分を違約金として徴収する」等を定めてある場合でも、入居者が素直に違約金の支払に応じるとは限りません。「フリーレント期間は2か月であり、その間の賃料は支払う必要がない。それに賃貸借契約を借主が解約する場合は1か月前に申し出れば良いのだから、家賃は一切支払わなくて良いはずだ。」と主張することが考えられます。

 最終的にはオーナー様、不動産仲介会社などを交えて話し合いをすることになりますが、大きな時間のロスが避けられませんし、何としても支払に応じない方が多いのが実情です。

フリーレント期間を設けることによる減収はかなり大きい
 フリーレントの期間を2か月に設定した場合、年間に得られる賃料の6分の1、つまり約17%を得られないことになります。

 入居者が決まる前には空室期間がありますので、フリーレント期間の設定による賃料の減収が加わることによる年間賃料の減収額はかなりの金額になることがあります。

 現在はコロナ禍であることから資材価格が高騰しており、さらに家賃の値上げも出来ない状況です。家賃の減収により設備の修繕に支障をきたし、賃借人が退去する原因になることがあります。

不動産会社からフリーレント期間を設けることを提案されたら
 不動産会社に対し、フリーレント期間が必要と判断した理由を尋ねてください。

 建物が古い、駅から遠い等の弱点がある賃貸物件であることから仕方なくフリーレント期間を設ける場合は、2週間~1か月未満にすることをお勧めします。弱点がない物件の場合は、フリーレント期間を設ける必要はありません。

契約直前に、入居希望者からフリーレント期間の設定を要求された場合
 不動産仲介会社は仲介手数料が欲しいことから、入居希望者によるフリーレントの要望に応じ、この場で契約するように勧めるかもしれません。しかし、この要望は基本的にお断りして構わないと考えます。入居希望者が「フリーレントに応じないなら契約しない」と主張した場合は、契約する必要はありません。

 入居を申し込む際にフリーレントの要望を出さず、契約直前に「フリーレントに応じなければ契約しない」と主張する賃借人は姑息です。このような方は、入居後にトラブルを起こす恐れがあります。経験上、具体的には以下のトラブルを起こしがちです。
・家賃の滞納。
・賃貸借契約の更新時に家賃の大幅減額を要求し、更新時期を経過した後は減額した賃料しか支払わない。
・更新料の定めがあるのに「更新料の意味がわからない」等と主張し、更新料の支払いに応じない。

 「フリーレントに応じなければ契約しない」と言われた場合は、賃貸借契約の締結をお断りするのが得策です。