賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律について(その4)
この法律の中核は、以下の通りであると考えています。
1.サブリース事業者および勧誘者(簡単に言うと収益物件の建設を立案した不動産会社、建築会社等)において、以下の行為を禁止 ①勧誘時において、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をするなどの不当な行為(第28条) ②不当な勧誘、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為(第29条) 2.サブリース業者と所有者との間に賃貸借契約が締結される前に、重要事項説明を義務づけ 3.賃貸管理事業者登録制度の創設 |
昨日までに、上表の1および2を説明しました。本日は、3の概要について説明します。
第二章 賃貸住宅管理業 第一節 登録 (登録) 第三条 賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない。 ただし、その事業の規模が、当該事業に係る賃貸住宅の戸数その他の事項を勘案して国土交通省令で定める規模未満であるときは、この限りでない。 2 前項の登録は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。 3 前項の更新の申請があった場合において、同項の期間(以下この項及び次項において「登録の有効期間」という。)の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、従前の登録は、登録の有効期間の満了後もその処分がされるまでの間は、なおその効力を有する。 4 前項の場合において、登録の更新がされたときは、その登録の有効期間は、従前の登録の有効期間の満了の日の翌日から起算するものとする。 5 第二項の登録の更新を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納めなければならない。 |
1.賃貸住宅管理業者は国土交通大臣の登録が必要
賃貸住宅管理業者は、国土交通大臣の登録を受けることが必要になりました(第三条第1項)。登録を受ける為には、その営業所又は事務所ごとに一人以上の業務管理者を置かなければなりません。
業務管理者は、第12条第4項が「賃賃貸住宅管理業に関する一定の実務の経験その他の国土交通省令で定める要件を備えるもの」と定めています。一定の実務経験がある者、または賃貸不動産経営管理士が該当することになると思われます。詳細は未定ですが、2021年6月中旬までに政令で定められると思われます。
現時点では「一定の実務経験がある者」の内容が決定していないようですが、「賃貸仲介や賃貸管理の実務経験が一定の期間以上ある宅地建物取引士」であれば、該当することになると予想しています。
2021年6月時点では、管理戸数200戸以上の事業者が登録必須になる見込みです。その後は登録が必要になる閾値となる管理戸数が徐々に減らされる可能性がありますが、このあたりはまだ公開されていませんので詳細は不明です。
2.登録が必要になる賃貸住宅管理業者
登録が必要になるのはオーナーのために人の居住用住宅を管理する事業者です。
居住用住宅とは居住用の1棟マンション・アパート、戸建住宅、区分マンションのことであり、店舗・事務所・倉庫などの事業用物件は該当しません。また、居住用住宅を事業者が借受け、事務所として使用している物件は、この法律では居住用住宅とは見做しません。
管理とは維持保全(1棟もののマンション・アパート、戸建住宅、区分マンション等の点検、清掃その他の維持、必要な修繕)のことです。
家賃・敷金・共益費・管理費等の徴収・管理・送金のみを行い、居住用住宅の維持保全(点検、清掃、修繕等)を行わない事業者は、賃貸住宅管理業者に該当しません。
3.借り上げ社宅を借りている企業および社宅代行業者はサブリース業者(特定転貸事業者)か
社宅代行業者がオーナーから物件を借り、企業との間に賃貸借契約を締結して企業の従業員を入居させる場合は社内規定などに基づき入居させることが一般的です。
当該企業と従業員との間に賃貸借契約が締結されている場合でも、賃料が相場より低廉な金額である場合は、当該企業は転貸による利益を得ていませんので、サブリース業者(特定転貸事業者)とは見做しません。しかし、社宅代行業者は、オーナーに支払う賃料と当該企業から支払われる家賃が同額の場合でも、手数料等の名目で収益を得ていることからサブリース業者と見做します。
4.賃貸住宅管理業者に求められる内容
第15条~第21条が内容を細かく規定しています。
①受託した管理業務の全てを第三者に再受託させる(いわゆる丸投げ)は禁止です。
②管理業務遂行により受領した金銭の分別管理が求められます。管理受託契約により集金した金銭(賃料、共益費等)は、管理事業者の財産と分けて管理する必要があります。
また、他の管理受託物件より集金した金銭とも分けて管理することが求められます。
③賃貸住宅管理業者は従業員に従業員であることの証明書を発行して携帯させる必要があります。この証明書は管理を委託した者からの請求があった際に提示しなければなりません。
④賃貸住宅管理業者はその営業所、事務所毎に帳簿を作成し、委託者毎に管理委託契約の受託年月日等を記載して保管しなければなりません。
⑤賃貸管理住宅管理業者はその営業所または事務所毎に、公衆の目立つ場所に国土交通省令で定める様式の標識を掲げなければなりません。
⑥賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況および国土交通省令で定める事項について、国土交通省令が定める方法により、管理の委託者に定期的に報告しなければなりません。
⑦賃貸住宅管理業者およびその代理人、使用人その他の従業員には守秘義務が課せられます。正当な理由がある場合を除き、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはいけません。賃貸住宅管理業を営まなくなった、または賃貸住宅管理業者の退職後も同様です。
参考条文 (管理業務の再委託の禁止) 第十五条 賃貸住宅管理業者は、委託者から委託を受けた管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはならない。 (分別管理) 第十六条 賃貸住宅管理業者は、管理受託契約に基づく管理業務(第二条第二項第二号に掲げるものに限る。以下この条において同じ。)において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭を、整然と管理する方法として国土交通省令で定める方法により、自己の固有財産及び他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭と分別して管理しなければならない。 (証明書の携帯等) 第十七条 賃貸住宅管理業者は、国土交通省令で定めるところにより、その業務に従事する使用人その他の従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない。 2 賃貸住宅管理業者の使用人その他の従業者は、その業務を行うに際し、委託者その他の関係者から請求があったときは、前項の証明書を提示しなければならない。 (帳簿の備付け等) 第十八条 賃貸住宅管理業者は、国土交通省令で定めるところにより、その営業所又は事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え付け、委託者ごとに管理受託契約について契約年月日その他の国土交通省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。 (標識の掲示) 第十九条 賃貸住宅管理業者は、その営業所又は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める様式の標識を掲げなければならない。 (委託者への定期報告) 第二十条 賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況その他の国土交通省令で定める事項について、国土交通省令で定めるところにより、定期的に、委託者に報告しなければならない。 (秘密を守る義務) 第二十一条 賃貸住宅管理業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。賃貸住宅管理業を営まなくなった後においても、同様とする。 2 賃貸住宅管理業者の代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、賃貸住宅管理業の業務を補助したことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。賃貸住宅管理業者の代理人、使用人その他の従業者でなくなった後においても、同様とする。 |
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