賃貸マンションやアパート(1棟もの)を任意売却で購入して構わないか

賃貸マンションやアパートを1棟まるごと購入する際に、任意売却により売り出されている物件を購入できないかという相談を時々受けます。相談の動機は安く購入し、高利回りを得たいということです。

新型コロナウイルス感染症の流行が収束せずに長引いていることから、賃貸マンションやアパート経営を副業で行っているオーナーにおける本業が立ち行かなくなり、結果として賃貸マンションやアパートが差し押さえられる例が増えています。これらの物件は、最終的には任意売却または競売により売却されます。

本日は、不動産業とは無関係の方が賃貸マンションやアパート(1棟もの)を任意売却で購入する場合の問題点について書きます。競売により購入する際の問題および特徴は、明日の投稿で書きます。

不動産会社ではない一般の方が、賃貸マンションやアパートを任意売却で購入することは、以下の理由により、ハードルが高いです。

任意売却の物件情報は、ほとんど公開されていません
レインズに掲載されることがたまにある程度です。ポータルサイトに掲載されることはほとんどありません。 
情報は、普段からお付き合いしている不動産会社から得るしかないのが現状です。

裁判所が作成し、公開している「配当終期の公告」を参照することにより、近い将来に競売にかけられる予定の不動産に関する情報を知ることが出来ます。しかし、この資料は不動産会社向けです。それに、一般の方が不動産の所有者に購入を持ちかけても、相手にしてもらえないことがほとんどです。

価格交渉ができません
任意売却が成立しても、抵当権者(金融機関等)は損切りをしなければならないことがほとんどです。金融機関などにおいて「この損切り額で収まるなら抵当権の抹消および任意売却に協力する」ということで提示された価格なので、値引きの余地はありません。価格交渉には応じて貰えないことが大半です。

ローン利用による購入を断られることが多いです
購入希望者がローンを利用して不動産を購入したいと思っても、通常のルートで販売される物件よりもリスクが大きいため、任意売却物件に対するローンを承認しない、または審査が厳しい金融機関があります。
この場合、購入希望者は全額を一括で支払う必要があります。

契約不適合責任免責
買い受けた不動産に何らかの問題があっても、全て自身で解決する必要があります。

土地の面積が、登記簿に記載されている面積と大きく異なることが予想されても、売主には測量の費用を支出するだけの資力がないことがほとんどです。また、隣地との境界が不明確な場合は、不明確な状態での引渡しになります。

雨漏り、水道管からの漏水、オートロックの故障など、不具合が生じていた場合でも、修繕費用は購入者の負担です。売却金額が決まっているため、値引きを求めることは出来ません。

古い建物の場合、見た目よりも朽廃が進行していることがあります。RCやSRC造であっても、建物の壁に亀裂がある場合は要注意です。

全ての賃貸借契約を引き継ぐことになります
購入した方が、全ての賃貸借契約を引き継ぐことになります。賃料を滞納している居住者がいても、所有者の変更を理由とした賃貸借契約の解約は認められません。退去させるためには裁判を提起する必要があります。
賃料を滞納している居住者がいる場合は、滞納している部屋の数と滞納期間、滞納金額などを調査し、裁判手続きにより退去させるための費用を見積もる必要があります。

売主および購入希望者の間で売買条件に合意しても、抵当権者(金融機関等)が許可しない場合があります
競売で売却した場合に想定される売却価格が、売主及び購入希望者の間で合意した金額よりも高い場合は任意売却を認めず、競売の実行に持ち込むことがあります。

まとめ

難しい理由が多いためにガッカリされるかもしれませんが、
・価格交渉ができない
・現金一括で購入する必要がある
・物件の瑕疵や滞納者の問題は自分で解決し、どのような方が賃借人でも自分が引き受けなければならない

ということです。

多くの場合、これらのリスクを取れるだけの知識と経験を備えた競売物件専門の不動産会社が買い受け、買い受けた不動産会社が瑕疵を取り除き、ある程度の利益を上乗せして投資家の方に販売しています。

一般の方が任意売却で売られている賃貸マンションやアパートを購入する場合には相応のリスクがありますが、リスクを取って自分で解決できれば、高利回りの物件を取得することが可能です。

既に複数の賃貸用不動産を運営して相応の経験がある場合には、任意売却による購入に挑戦する価値があります。この場合でも、知り合いに不動産会社がいる場合には相談し、アドバイスを受けることをお勧めします。