賃貸借物件を借りる際に受ける重要事項説明における注意点(その1)

 不動産の売買、または賃貸を行う際には重要事項説明書による説明があります。本日は、賃貸借契約を締結する際に、意外に確認し忘れることが多い内容について書きます。

1.普通賃貸借契約か、定期賃貸借契約か
 普通賃貸借契約は、改めて説明する必要は無いと思います。問題は、定期賃貸借契約です。東京都内における個人用住宅の場合は契約期間が2年間に設定されることが多いです。賃貸借契約は契約期間の経過により終了し、オーナー様が再契約を希望しない限り、必ず退去しなければなりません。

 契約期間が1年以上の場合、オーナー様は契約終了の1年前~半年前までに契約終了の通知を送る必要があります。これを怠ると、定期賃貸借契約は自動的に普通賃貸借契約に変換します。

 定期賃貸借契約には更新料および更新事務手数料の概念がありません。入居者が当該物件に住み続けることを希望する際は、オーナー様と再契約することになります。従って、更新料ではなく不動産会社に対する仲介手数料および礼金が改めて必要です。

 この場合の仲介手数料は、家賃の半月分に抑える物件が多いです。入居者が既に決定しており、新たな入居者を募集する必要がないからです。

 最近では、入居者がトラブルメーカーである場合に対応出来るように、全ての賃貸物件について定期賃貸借契約しか締結しないとするオーナー様が徐々に増えています。

2.抵当権または根抵当権が設定されているか、設定されている場合はいつ設定されたか
 オーナー様が賃貸住宅経営を開始するにあたり、当該収益用不動産を購入するために金融機関から事業用ローンを利用して資金を借りていることがあります。資金を借りる際には当該収益用不動産に抵当権または根抵当権を設定します。

 抵当権または根抵当権を設定する意味は、オーナー様が事業用ローンの返済ができなくなった際に収益用不動産を裁判所が実施する不動産競売にかけて資金を回収することにあります。

 オーナー様が事業用ローンを順調に返済できていれば、入居者には何も問題はありません。しかし、事業用ローンを返済できなくなり、抵当権または根抵当権が実行された際には入居者(賃借人)が存在するか否かを問わず、競売により第三者に売却されることになります。

 問題は売却後です。抵当権または根抵当権が設定された後に賃貸借契約を締結した賃借人は、不動産競売が成立して競落され、買受人が決定し、不動産の所有権移転登記が完了した時点で賃貸借契約が終了することから買受人から退去を求められることがあります。この場合、6か月の明渡猶予期間が与えられ、原状回復義務もありませんが、転居に要する費用を競落した買受人に請求することは出来ません。敷金の返金は、元の所有者に対し請求することになります。

 しかし、抵当権または根抵当権が設定される前に賃貸借契約を締結した賃借人は保護されます。賃貸借契約は賃貸人が変更しただけの扱いとされ、他の部分は依然として有効です。買受人から退去を求められても従う必要はありません。そして買受人が新しいオーナー(賃貸人)になるので、家賃は買受人に支払うことになります。

 抵当権または根抵当権が設定された後に賃貸借契約を締結した賃借人(入居者)は、物件が不動産競売により売却されることにより不測の損害を被る恐れがあります。このため、抵当権または根抵当権の設定状況は、重要事項説明の際における必須説明事項とされています。

 また、収益用不動産に抵当権または根抵当権を設定されているオーナー様におかれては、入居者(賃借人)に以上の内容を正確に伝えているかを確認する必要があります。オーナー様におかれては、重要事項説明書の案が作成された時点で自分で確認したい旨を不動産会社に伝え、事前に確認する必要があります。

※他にも注意しなければならない点があります。明日の投稿に続きます。