重要事項説明の内容には十分な注意が必要です(売買、賃貸)

 不動産の売買契約および賃貸借契約を締結する前には、宅地建物取引士が重要事項説明を行います。この重要事項説明ですが、多くの内容が盛り込まれ、不動産業界に携わったことがない方においては意味がわからない言葉が羅列されていることから、説明し始めてから数分も経過していないのに早く終わらせることを求めるお客様がいらっしゃいます。

 しかし、引越費用などを含めると、賃貸物件は数十万円、売買契約の場合は数千万円以上の支払になります。お客様は「高額なお買い物」をするわけであり、何らかの問題が後から発生した際に「知らなかった」、「説明がなかった」では済まない内容が多くあります。退屈でも最後まで説明を受けることを強くお勧めします。

 不動産売買、賃貸にかかわらず、重要事項説明書には契約締結後に問題となる可能性がある事柄について列挙しています。多くは法令および政令に基づき説明が必須であるとされている内容です。

 その他に注意が必要な内容は「特記事項」として記載し、これが契約の内容に関わる場合は「特約事項」として記載し、説明します。これらの「特記事項」および「特約事項」については特に注意が必要です。

 まれに法令で禁止されている内容が、「特記事項」または「特約事項」として重要事項説明書に記載されていることがあります。

 例えば、賃貸借契約では「賃貸物件の入居時に締結する火災保険の保険会社、契約内容を指定する」、「家賃の支払いが1回でも遅れた場合は玄関扉を施錠して室内の全物品を廃棄するが、異議を申し立てない」、「建物、設備に故障が生じた際の修理費は借主の負担にする」、「建物内の事故により死傷しても、貸主は一切責任を負わない」等の内容です。

 売買契約では売主が宅地建物取引業者で、買主が不動産業者ではない一般の方であるにもかかわらず「売主は契約不適合責任を一切負わない」とする条項を重要事項説明書の特約として記載したものが散見されます。

 このような内容を重要事項説明書に記載する不動産会社は未だに存在します。借主または買主が重要事項説明書にこれらの内容が記載されていることを確認した際は、重要事項説明の際に条項の変更又は抹消を要求するべきです。

 また、賃貸物件のオーナー様におかれては、このような重要事項説明書を作成する不動産会社には入居者募集を依頼しないことが賢明です。明らかに公序良俗に反する規定は民法第90条により無効とされるので、これらの条項を入れることは無意味です。

 これらの条項が重要事項説明書に記載されていると、事件や事故が発生したことから借主からの民事訴訟が提起された際にオーナー様が一方的に不利になることがあります。裁判所の心証が良くないからです。

重要事項説明書に記載されていない内容にも注意
 売買物件の場合は、何らかの瑕疵があるにもかかわらず、重要事項説明書に何も記載しないことがあります。例えば隣地の建物が売買契約の対象となる土地に越境しており、売主がそのことを知っているにもかかわらず重要事項説明書には全く記載していないことがあります。

 また、筆者が実際に遭遇した事例ですが、実際に現地で確認した土地の境界および境界標の位置、地形が重要事項説明書に記載されている内容と大きく食い違っていたことがあります。

 さらに、近い将来に地域の再開発が行われる予定があり、土地が収用されることがほぼ確実なのに、そのことが重要事項説明書に記載されていないことがあります。

 不動産業に携わらない一般の方がこれらの情報を事前に取得することは困難かもしれませんが、少しでも疑問が生じた場合は重要事項説明の際に特約の追加または訂正を要求するべきです。