買ってはいけない収益物件(その3、特約に問題があるサブリース物件)

 賃貸人(オーナー)が所有する物件に対して管理会社が一括借り上げを行い、この管理会社が賃貸人として賃借人の募集、賃借人との間の賃貸借契約(サブリース契約)の締結、管理、家賃の出納を行う物件があります。

 このような収益物件は、収益物件のオーナーには管理上の手間がかからない上に、空室の有無にかかわらず一定の収入を確保できることから金融機関による事業用ローン審査が緩くなるので、賃貸経営を副業として位置づけているオーナーにおいて重宝されています。

 しかし、サブリース契約が締結されている物件を購入する際は、現オーナーが管理会社との間に締結している賃貸借契約(マスターリース契約)の内容に注意する必要があります。

 収益物件に関する相談で、よくあるのはマスターリース契約に関する相談です。相談者の多くは、不動産会社や建築会社等に勧められたことから、マスターリース契約の内容を十分に確認しないで収益物件を購入しています。相談の内容は、マスターリース契約の解約に関するものが多いです。

 マスターリース契約が普通賃貸借契約である場合、オーナーからの解約は極めて困難です。後述しますが、マスターリース契約における特約により定期的に支払を求められる維持費が高額であることから維持できず、マスターリース契約の解約には多額の違約金そ支払わなければならないことから売り出されている物件があります。このような物件を購入すると、後が大変です。

 マスターリース契約およびサブリース契約が締結されている収益物件を購入すると、購入した方はマスターリース契約およびサブリース契約をそのまま継承しなければなりません。売買が行われたとしても、これを理由としたマスターリース契約の解約は、借地借家法により認められていません。

危険なマスターリース契約の例
 各部屋の設備(湯沸かし器、キッチンユニット、バス・トイレなど)や外壁・屋上の塗装を一定の期間ごとにオーナーの負担で行わなければならないこと、およびこれらの工事は全て管理会社、または管理会社が指定する工事業者に対して発注することが、マスターリース契約の特約として規定されていることがよくあります。

 そして、設備の交換や外壁塗装を一定の年数毎に行うとしても、その年数が一般的に行われる年数よりもかなり短く設定されていることがあります。例えば、一般的に外壁塗装は10~15年に一回程度行えば良いとされていますが、マスターリース契約の特約において7~8年毎に塗装することをオーナーに求めていることがあります。

 そればかりか、指定の工事業者による請求金額が一般的な相場の2~4倍に設定されていることがあります。指定業者以外の工事業者による工事を一切認めず、強行した場合には多額の違約金を請求してきます。

 さらに、一定期間ごとに大幅な家賃減額を要求してくることがよくあります。契約更新の際に家賃の2割を値下げするように迫る業者があります。応じない場合はマスターリース契約の解約をちらつかせ、「全ての入居者を一斉に退去させる。」などと一方的に告げてくることがあります。

 管理業者から「家賃の値下げ要求は借地借家法が認める正当な行為なので、受け入れないなら裁判で争う用意がある。」等と言われると、多くのオーナーは値下げを受け入れてしまいます。すると、上述した多額の設備更新費や外壁塗装費等を捻出できなくなり、「経営破綻」を招くことになります。

 いわゆるサブリース方式で運用されている収益物件を購入する際は、現オーナーが管理会社との間に締結している賃貸借契約(マスターリース契約)の内容を精査する必要があります。万が一、購入前において賃貸借契約書(マスターリース契約書)の閲覧を断られた場合は、その物件を購入しないことをお勧めします。