困った相談(その16、賃貸マンションの退去時にカギを返却しない)

退去したのにカギを返却しない賃借人

 1棟マンションのオーナー様からの相談です。貸室の入居者から賃貸借契約を解約したいとの申し出があり、退去予定日に引越業者が訪問して家財を搬出しました。マンションの管理はオーナー様が自ら行い、外部の業者には委託していないとのことです。

 退去した方にカギの返却を求めたところ「1週間後にオーナー様のご自宅を訪問してお返しします。」とのことでした。ところが1週間後の訪問はなく、カギが郵送されることもありませんでした。

 カギの返却を催促したら「仕事が猛烈に忙しく、訪問してカギを返すことも郵送することもできません。いつお返しできるかわからないので、リフォームが必要な場合はオーナー様がお持ちのカギで開けて入室させて構いません。ところで敷金を返還してください。振込先口座は○○銀行普通預金、口座番号○○○○○○○、口座名義××××」と書いたメールが送られてきたとのことです。

相談内容

 「カギはまだ受け取っていないが、敷金を返還して構わないか。そして直ちにカギを交換して次の入居者を募集して構わないか。」というのが相談内容です。

 オーナー様は賃貸借契約の解約に関する連絡を受けているものの、退去予定日にカギが返却されていないことから貸室の占有は依然として賃借人にあると言えます。室内が空の状態であり、合鍵をオーナー様が所持しているとしてもカギの返却が行われていない以上、無権限で貸室の占有が継続していると言えます。

 カギが返却されていない以上、貸室をオーナー様にお返ししたとは言えません。退去予定日の翌日から実際にカギが返却された日までの日数分に相当する家賃相当額の損害金を請求することができます。

 賃貸借契約書の特約に、「退去予定日を通告した場合において、その退去予定日を過ぎても部屋を退去しない場合は2倍の家賃を徴収する」旨を定めていることがあります。この場合は 退去予定日の翌日から実際にカギが返却された日までの日数分に相当する家賃相当額の2倍の金額を損害金として請求できます。

 このため「カギを返還しなければ賃貸借契約は終了したことにはならない。カギの返却が完了する迄は家賃が発生する。」と連絡し、カギの返還を強く迫るべきです。

 敷金は、損害金を差し引いた上で返還することで足ります。不足する場合は追加で請求して構いません。

 なお、トラブルを起こす可能性があるのでカギの返却が行われる前にオーナー様がカギを交換してリフォーム工事を開始することは、なるべく避けることをお勧めします。室内に家財が少しでもあり、カギの返却がまだ行われていない場合における部屋の占有権、および家財の所有権は依然として賃借人にあります。不用意に部屋に立ち入ると「家財がなくなった」等のトラブルに巻き込まれることがあります。

 また、「 リフォームが必要な場合はオーナー様がお持ちのカギで開けて入室させて構いません。」との連絡があった場合でも、不用意にリフォームを始めると家賃相当額の損害金を受け取れなくなる恐れがあります。