買ってはいけない収益物件(その2、無届け増改築を前提とした物件)

※昨日の続きです。

2.無届けで増改築することを前提とした物件の購入は避けるべき
 昨日は、無届けで建築された収益物件の購入を避けるべきである旨を書きました。最初から無届けで建築された建築物を購入する目的で、事業用ローンによる融資を申請しても、これに応じる金融機関はほとんどありません。 このため、事業用ローンを利用して収益物件を購入する場合に無届け建築物を購入する危険は少ないと言えます。

 しかし、購入後に「部屋を増やして家賃を多く受け取りたい」と考え、屋上に1~2部屋を増築する、または建物に隣接する別棟の建物を建築する方がいます。このような方の中には、購入前から無届けで増築することを前提として購入する方がいます。

 「事業用ローンが成立した後であれば、多少の増改築は許されるだろう」とか「違法行為であるとしても発覚しなければ大丈夫だろう」とお考えのオーナーが多く、驚かされます。

 購入後に増築を勧める建築業者があります。建築業者の中には、建ぺい率や容積率等の法的規制を考慮することなく、お客様の求めに応じて増改築を行うところがあります。「この建物であれば、屋上に1~2室増築しても建物の耐久性に影響ありません。増築して家賃を多く稼ぎましょう。」「後から増改築しても、行政がクレームを付けることは、まずありません。」などのセールストークを用い、オーナーを勧誘します。この勧誘に乗ってしまい、提案された違法な増改築を自ら行ってしまうことがあります。

 テレビ番組などで、家賃が激安である屋上に設けられた狭小の部屋が紹介されることがあります。このような部屋は、建築確認申請を行うことなく増改築したことにより造られた部屋である可能性が極めて高いです。

 しかし、このような違法な増改築は、消防署の点検により発覚しがちです。特に近隣で火災が発生した場合、同じ町内の建物に対する一斉点検が行われ、その際に発覚します。前面道路から違法に増築した箇所が見える物件の場合、立ち入り調査の対象になる恐れが高いです。

 消防署から市区町村役場や特定行政庁1)に知られると是正勧告や是正命令を受け、最終的には増改築した箇所をオーナーの負担で取り壊さなければならなくなります。違法に増築した部屋に賃借人が居住している場合、オーナーの負担により転居させ、増築部分を取り壊す必要があります。

 オーナーが取り壊しを拒否した場合は行政代執行が行われ、取り壊されます。発生した費用はオーナーの負担になります。違法増改築は大きな損失の発生を招きます。

 また、違法な増改築は、売却の際に支障をきたします。大半の金融機関は、このような物件の購入に対する事業用ローンの利用を許可しません。事業用ローンを利用した購入を希望する方は購入できないことになります。この場合、ローンを利用することなく現金一括での購入が可能な買主を探すことになりますが、大幅な値引きを要求されることが大半です。

 家賃収入が一時的に増えたとしても、違法増改築は建物の価値を大きく下げることになります。購入後に違法な増改築を行うことを前提とした収益物件の購入は避けるべきです。

1)特定行政庁とは
 建築確認申請、検査等の建築行政を行う行政機関であり、建築主事がいます。市区町村役場内に設けられているところが多いですが、郊外や地方都市では複数の市区町村における建築行政を一箇所で一括して行うところがあります。このような場合、市区町村役場とは別に設けられています。